LINGUA MANIA ブログ

schoolの起源について

2014.07.19

学校とか勉強とかいう言葉にはどこか強制的な匂いが漂い、直ちに嫌悪感を感じる人もいるであろう。この「学校」を表すschoolの語源はギリシャ語のscholeであり、意味は「暇」であった。

 

いわゆる勉強、学問は暇を持て余した人々が自由な時間を使って、集い、議論などを行っていたことに端を発すると云う。労働、仕事は奴隷が行う。このことから、もし自分の意志ではなく学ぶことを強いられたら、逆説的にそれはもはや奴隷である、と主張する人もいそうではあるが、実際にはどうだったのだろう。

 

『西洋古典学事典』(松原國師著、京都大学学術出版会)によると、プラトンの学校アカデ―メイアでは、「笑うことは許されず、また魂の浄化のために小時間の睡眠や肉食の禁断が要求された」らしい。これなどは、どこかカルト宗教臭さえ漂う。

 

よく耳にする名称の「~アカデミー」は、もちろんこのプラトンの学園アカデ―メイアに源がある。前387年頃に設立されたこの学園の名称アカデ―メイアは、アッティカの伝説上の英雄アカデーモスに由来するらしい。

 

アカデ―メイアでは、先生と生徒は一つの生活共同体で結ばれ、授業料はなかったらしい。この学園からは、アリストテレースをはじめ、多数の逸材が輩出された。

 

アリストテレースは、前335年にアテーナイ郊外に学校を作る。その名はリュケイオン。こちらの名称は日本では、ほとんど知られていない。ただ、フランス語を学ばれた方には、なじみ深いlycee(リセ)という言葉がある。ちょうど日本の高校に当たる。このリセの語源になるのがリュケイオンである。

 

ラテン語では「学校」のことをludusという。ludusを羅和辞典で引くと、「遊戯;競技;学校」などの意味が見られる。この単語の動詞 ludoは「遊ぶ」の意味になる。やはり勉強に一番大切なのは遊び心であろう。ここまでの考察によると、ギリシャ・ローマに「学校」の源があるように思えるが、事態はそう単純ではない。

 

ギリシャ・ローマ文明の前には、メソポタミア文明がある。『歴史はスメールに始まる(N・クレマー)』(新潮社)によると、「スメールの学校制度が十分に発達し栄えたのは、紀元前三千年紀の後半である」そうである。「スメール」という表記に一言。私が所有しているこの翻訳は、昭和34年に発行されたものである。現在では、ほぼ「シュメール」という表現に統一されている。従って、ここでも以後「シュメール」の表記を使う。

 

シュメールの学校は、役所や神殿、宮殿などで働く人、いわゆる「書記」を養成するための職業的な訓練所であったのであろう。誰もが教育を受けられたわけではなく、富裕階級の子弟だけが学校に通った。また、学校は男性だけで成り立っていた。神学、植物学、動物学、鉱物学、地理学、数学、文法などなど、様々な学問が発展していった。専門の教師も存在していたらしく、現在と変わらず安月給で苦労していたらしい。一方で、教師は生徒を訓育のため鞭打った。生徒は毎日朝早くから太陽の沈むまで学校で学んだ。

 

メソポタミアで発掘された粘土板には、様々な内容のものがあるが、非常に人間的なものも少なくない。そこには教師と生徒の日常的なやりとりなども伺い知ることができるものもあるようである。以下は、ある資料からの想像。

 

「君は、なぜ遅刻したのだね?」
「すいません、もう二度としません!」
「君は、先週もそう言っていたね!」
「先週は、母が起こしてくれなかったのです。」
「君は、自分の遅刻を人のせいにするのかね?お尻をだしなさい!鞭打ちです!!ビシッ!!」

 

この生徒は先生の怒りを鎮めるために、家に帰ると父に言う。
「父さん、先生を家にお招きしたいのですが。」
「どうしたのだ?」
「いえ、尊敬する先生に敬意を示しておく必要はありませんか?」
「その通りだ。お招きしよう!」

 

父親は、先生に葡萄酒を飲ませ、おいしいものを食べさせる。衣服を与え、指輪を贈る。 先生は、少し機嫌が良くなるのである。 「おたくの息子さんは、優秀ですね!努力家です!将来は立派な書記になるに違いありません!でも、遅刻はいけませんよ!!」 今から5000年前の日常である。

 


<英単語の作り方>16 (接頭辞入門:数字)

2014.07.01

<英単語の作り方>16

接頭辞入門(その9)

数字関係の続き。今回は「3」について考察していこう。

◎tri- (ラテン語・ギリシャ語) 「3」は、ラテン語ではtres、ギリシャ語ではtreisなので、今回は両者合わせてtri-としておこう。

「1」「2」「3」を「車輪の数」で、再確認してみよう。unicycle、bicycle、tricycle。

triangleは、「3つの」「角」をもっており、「三角形」という日本語にされる。「3人組」はtrio。「3倍」はtriple。「3倍にする」はtriplicate。tripletの意味は文脈に依存していて、twins(双子)に対してはtriplets(三つ子)であり、音楽の話をしている時はtriplet(3連符)となる。

 

接頭辞入門(その10)に続く


<英単語の作り方>15(接頭辞入門:数字)

2014.06.19

接頭辞入門(その8)

グループCを拡張して、今回は「2」に関して眺めていこう。

◎ラテン語系bi-

ラテン語のbis(=twice)に由来。bicycleに含まれているbi-の形で接頭辞として機能する。「二か国語を話す人」はbilingual、「二足動物」はbiped、「双眼鏡」はbinocular、「重婚」はbigamy、「二進法」はthe binary system、「二院制」はthe bicameral systemという。bicameralといえば、ジュリアン・ジェインズのThe Origin of Consciousness in the Breakdown of the Bicameral Mindという人間の意識の起源に迫った面白い本がある。

「10億」を表すにはbillionという単語がある。このbillionが「10億」の意味になって行く過程は省くが、以下のように覚えておくと良い。thousandは1,000、millionは1,000,000、billionは1,000,000,000であり、millionの次(2番目)のカンマがbillionであり「10億」であると記憶しておくと有益である。

 

◎ラテン語(ギリシャ語)系 duo- ( do-, dou-, du-, di- )

ラテン語のduo(=two)に由来。「二重」はdouble、「二つの;二重の」はdual、「二重奏」はduet、「二重奏の奏者」はduo、「二重の;複製の」はduplicateという。

doubt(疑い)は、ドイツ語では Zweifelと言う。このZweiは「2」の意味。何かについて、正しいのか間違っているのか、2つの揺れる心を表す。

「揺れる心」と言えば、dilemmaという単語がある。二者択一を迫られて板挟みの状態を表す。

 

接頭辞入門(その9)に続く

 


<英単語の作り方>14(接頭辞入門:数字)

2014.06.11

接頭辞入門(その7)

グループCの拡張

数字の[1、2、3]を表すグループC [unicycle, bicycle, tricycle ]の拡張を行なっていこう。先ずはラテン語と古典ギリシャ語の基数1~10をざっと眺めてみよう。

ラテン語基数1~10

1 unus
2 duo
3 tres
4 quattuor
5 quinque
6 sex
7 septem
8 octo
9 novem
10 decem

古典ギリシャ語基数1~10

1 heis
2 dyo
3 treis
4 tettares
5 pente
6 hex
7 hepta
8 octo
9 ennea
10 deca

 

次に、実際に英語の接頭辞として機能する形を見てみよう。今回は「1」の形に焦点を絞ることにしよう。

接頭辞「1」について

◎ラテン語系 uni-

ラテン語の「1」を表すunusから、英語の接頭辞 uni-が派生する。簡単なものとしては、unicycle (一輪車)、unicorn (一角獣)、unique (唯一の)、unit (単位)、unite (一つにする)などがある。

uniformは、「一つの形」という意味から形容詞としては「同一の」という意味になり、名詞としては「制服」の意味にもなる。unanimousは、「一つの心」というのが本来の意味で「満場一致の」などと訳される。

 

◎ギリシャ語系  mono-

ギリシャ語の monos (唯一の)に由来。ギリシャ語系の「1」は、このmono-が担当する。卑近な例として、monorail (モノレール:レールが一つ)、monochrome(単色の)、monopoly(独占)、monotonous(単調な)などがある。

monarchは、[mon + arch(支配)]で、「君主;独裁者」の意味。monk(修道士)の原義は「一人で生きている者」。そのmonkは、monastery(修道院)で生活している。

 

ここからは、いわゆる接頭辞として分類されるかは微妙な問題が残るが、「1」を感じ取れる接頭辞的な役割のパーツとして記憶しておくと良い。

 

〇ラテン語系 sol-

sol-は、ラテン語solus(=alone)に由来。
「独奏」はsolo、「孤独」はsolitude、「唯一の」はsole、「独白」はsoliloquyなど、「1」を感じ取ることができる。

 

〇ギリシャ語系 proto-

ギリシャ語protos(=first)に由来。「原型;試作品」のことはprototypeという。protocolは、「議定書;協定」などの意味のほかに、「手順」に近い意味で用いられる。

 

〇ラテン語系 prim-

ラテン語primus(=first)に由来。「総理大臣」がprime ministerであることから、primeの「第一の;主要な」の意味が見て取れる。「原始の」を表すには、primevalやprimitiveなどがある。「主要な」は、primaryやprincipalがある。prince(王子)の原義は「第一の者」。

 

〇 one

接頭辞ではないが、oneを組み込んだ単語を眺めてみよう。先ずはalone。aloneは、[ all one ]で「全く一」となり、「ひとりで;ただ~だけ」の意味となる。ここで表れてきているal- は、almighty (全能の)やalmost (ほとんど)の中にも生きている。

atonementという単語がある。[ at one + -ment (名詞語尾)]という分析で、意味は being at one with God and manとなる。「神と自分自身が一体になること」で、「罪を償うこと」を表す。

 

接頭辞入門(その8)へ続く

 

 

 


言語と音楽(その1)

2014.05.31

ガンジス河はそこにあり、昔と変わらず人々の穢れを取り除いていた、自らは泥まみれで。バラナシの迷宮のようなストリートを右に左に上に下に進んでいくと、「ここです。」とオートリクシャー運転手の青年は言う。そこはタブラ奏者Bagchiの自宅兼音楽教室であった。「ようこそ!さあ、中へお入りください。」ここで、プライヴェートコンサートを行ってくれることになっている。

 

こぼれそうな笑みとともにチャイが運ばれてきた。「音楽を聴きたいそうですね。ちょっと待ってくれたまえ。いま仲間を呼んでみるよ。」電話でミュージシャン仲間に連絡を取っている様子。チャイがもう一杯運ばれ、甘いお菓子を楽しむこと30分、一人のでっぷりしたおっさんが眠そうに姿を見せた。「やあ!」

 

二人目の音楽家が現れるまでにはさらに30分。ひょろっとした若者が元気とともに「やあ!」。Bagchiは、壁に貼られたインドの神々に何やらお祈りを始める。お香の香りが狭い部屋に広がっていく。部屋の片隅でシタールが音を広げる。それは妖艶な妖精を背に乗せたお香のように滑らかに空気の上に遊ぶ。Bagchiのタブラがいつの間にかシタールの流れに硬質さを据える、こぼれる香りをとらえるように。新たな音がそれに加わる。ひょろっとした青年は笛を吹いていた。ひらひらと漂う煙のように、その音の一つ一つにインドの神々が鎮座ましましていた。