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  • LINGUA MANIA ブログ

    英語における「中間態」的現象について

    2013.10.26

    能動態と受動態の他に古典ギリシャ語には中間態という態が存在する。これは、動詞の形が受動態のようでいて、意味は能動態に近いが微妙に異なるシステムである。ラテン語にも、この態は存在していたが次第に消失していき、普通、ラテン語文法では中間態を扱わないが、その残滓は形式受動態動詞(deponentia)として存在する。サンスクリット語では、文法の切り口や名称は異なってはいるが、中間態に相当する態は、アートマネーパダという名称で存在する。印欧語のなかでは最古層のヒッタイト語では、中間態と受動態を分けずに「中・受動態」という分類を行っている。名称や分類がどうであれ、英語にも能動態と受動態という二本柱では割り切れないシステムが存在している。まずは、実際に例を見てみよう。今回はそのグループをタイプA、タイプB、タイプCに分類する。(タイプA、Bは、動詞の形が能動態で意味が受動的。タイプCは、動詞の形が受動態で、意味が能動的なもの)

    タイプA(動詞の形が能動態で、意味が受動的、主語の特徴付けをする語句を伴う)

    1)    The book sells well.(その本はよく売れている。)

    2)    This razor cuts well.(このカミソリはよく切れる。)

    3)    This sweater washes easily.(このセーターは簡単に洗える。)

    4)    The article reads well.(その記事はよく書けている。)

    5)    Ripe oranges peel easily.(熟したオレンジはよく皮がむける。)

     能動態、受動態、中間態について、次の定義に目を向けてみよう。以下は、ヒッタイト語の文法書から引用。

    Functionally, we may distinguish three verbal voices: active, passive, and middle. In the active voice the subject is the initiator of the action (the “agent”) expressed by the verb with no further implication. In the passive the subject is the recipient of the verbal action (the “patient”). In the middle voice the subject both initiates and is somehow affected by the verbal action.

    A Grammar of the Hittite Language
    Harry A. Hoffner Jr. and H. Craig Melchrrt

     「機能的に動詞の態は3つに分類できる。能動態、受動態、中間態である。能動態において、主語は動詞の表す行為の開始者(動作主)であり、それ以上の含みはもたない。受動態においては、主語は動詞の表す行為を受ける者(受動者)である。中間態では、主語は行為を開始し、しかも動詞の表す行為によって何らかの影響を受ける。」

    英語学習者には耳慣れない中間態という概念を他の文法家の分類と分析を通してもう少し眺めてみよう。印欧語における中間態は、動詞の語尾は大体において受動態の語尾と同じであるが、意味的には能動態に近い。細かく眺めると、意味的な特徴は次の4つに分類されることが多い。以下は『ギリシア語四週間』古川晴風の分類によるもの。

    古典ギリシャ語における中間態の意味的特徴
    1)再帰的;主語が動作の直接目的になる場合

    2)「自分自身のために~する」の意味を表す。

    3)相互的、すなわち「互いに~する」の意味

    4)ほとんど能動と同じであるが、自分の能力によって動作を行う場合

     英語やフランス語で書かれた古典ギリシャ語の文法書では、意味内容にもよるが、中間態の文をそれぞれの言語に翻訳する場合、再帰代名詞を用いることが多い。そこで、再帰代名詞に注目し、先に示した英語における「中間態」的な文(タイプA)について再考しよう。

    1a) The book sells well.(その本はよく売れている。)

    1b) The book sells itself well.

    2a) This razor cuts well.

    2b) This razor cuts OBJECT well.

    1a)の文は1b)の文からitselfという再帰代名詞を省略した文であると考えることができる。ところが2a)の文では、再帰代名詞の省略ではなく、目的語の省略であると思われる。したがって、このタイプの英文すべてが再帰代名詞の省略では説明がつかない。ただ、一つ言えることは、タイプAの英文では、必ず主語を特徴付ける表現が示されているということである。特徴付けは、主には副詞によってなされるが、定冠詞や指示形容詞、または例文6のripe orangesのように、主語を形容詞が特徴付けることもある。また、否定文においては、否定自体が特徴付けになり以下の英文は可となる。

    1c) This book won’t sell.(この本は売れないでしょう。)

    [ 主なタイプA動詞 : wash,  read,  write,  sell,  cut,  peel,   drive,  handle,  press, break,  wear,  photograph,  translate 等 ]

     主語の特徴付けという点に焦点を合わせてみよう。次の英文の1a)と1b)をまず比較して、look(見る/見える)の性質を考えてみよう。

    タイプB(動詞の形が能動態、意味が受動的、SVCの文型、Cが主語の特徴付けを行う)

    1a) This girl looks at the baby.[能動態で能動的意味]=「主語が見る」

    1b) This girl looks happy. [能動態で受動的意味]=「主語が他の人にCのように見える」

    2) This wine smells sweet.

    3) The food tastes bad.

    4) That song sounds familiar to me.

    5) The fork felt heavy.(そのフォークは重く感じられた。)

     1a)の「見る」を除き、いずれもSVCの分析が当てはまる形式であり、Cに相当する語は主格補語と呼ばれ、主語の特徴付けを行っている。また、この場合の動詞は自動詞ではあるが、補語を取るので、不完全自動詞であるという説明がなされることが多い。この主語の特徴付けに当たるCを省いてしまうと、このタイプの文は成立しなくなる。不完全自動詞の「不完全性」を取り除くと、完全になるのではなく不完全な文になるのである。
    1c) This girls looks.????

    このタイプの特徴は、五感を表す動詞である。
    [ 主なタイプB動詞 : look,  seem,  sound,  taste,  smell,  feel  など ]

     次に動詞の形が受動態で、意味が能動的な英文を見てみよう。心身の状態(主に感情)にかかわる動詞であるタイプC-1と、それ以外のタイプC-2に細分する。

    タイプC-1(動詞の形が受動態で、意味が能動的、感情を表す)

    1)    I am surprised at the news.

    2)    That boy is interested in history.

    3a)    She is worried about  her husband’s health.

    4)    We were disappointed with the result.

     このタイプC-1では、元の動詞が他動詞であり、それを受動態にすることで能動態的な意味を作り出している。感情の起因は、自分の心以外のところにあり、それが起爆剤となり心が動く。ポイントは、自発性ではなく、他からの何らかの影響により心が動くということである。

    worryなど、場合により自動詞として使うこともあるので注意が必要である。
    be worried about ~ は、外部要因によって主語が影響を受け、その結果、心に生じた今ある具体的な心配を示し(3a)、worry about ~ は、心配するという行為(3b)や漠然とした心配を示すように思える。このタイプの表現の違いについては、後にmarryという動詞においても考察する。

    3b) Don’t worry. (心配しないで。)

    [ 主なタイプC-1動詞 : surprise,  interest,  worry, disappoint,  amaze,  bore,  amuse,  confuse,  excite,  puzzle,  satisfiy,  tire,  irritate,  frighten,  embarrass など ]

     

    タイプC-2(動詞の形が受動態で、意味が能動的、感情以外を表す)

    1)  The car was headed for New York.(その車はニューヨークに向かった。)
    2) Tom and Mary got (were) married last month.(トムとメアリーは先月結婚した。)
    3)  I was born and raised in New York.(私は生まれも育ちもニューヨークだ。)
    4)  That man was killed in a plane crash.(その男は飛行機事故で死んだ。)
    5) 153 people were seriously injured in the crash.(その事故で153人が重傷を負った。)

    このC-2タイプの考察には、自動詞と他動詞の概念の導入が有効である。わかりやすいものとして、be killedとdieの違いを見てみよう。日本語にすると「死ぬ」でくくられるが、その違いは明瞭である。be killedの場合は、主語が何らかの力の影響を受け「死ぬ」ことを示すのに対し、dieは病気などの死亡要因はあるものの、自発的に、自然に「死ぬ」ことを表している。「育つ」の意味のbe raised(周りの人のおかげで育つ)とgrow up(植物が育つように自然に育つ)の関係もこれに似ている。

    Cタイプについてのポイントは、<自発性/他からの影響>という対立の後者、つまり文中で主語が他から何らかの働きかけを受けることを示している。C-1タイプでは、感情の動きの原因は自分の心の外側にあり、その外的因子によって心は影響を受ける。C-2タイプで確認したように、この「他からの働きかけ」は、日本語に反映されることなく解釈されることが多い(dieとbe killedは、ともに「死ぬ」と訳される)。しかし、英語ではこの違いが明確に表れている。もう一つ、marryという動詞を考えてみよう。

    1) I am married.(私は結婚している。)

    「過去分詞が形容詞化している」という当たり前の説明はここでは抜きにする。結婚には自分の意志だけではどうにもならない「他からの働きかけ」が必要であり、その結果「結婚している」という状態になる。主語が自ら、「能動的」に、勇気を振り縛ってmarryを能動態として使った 2)の英文をみてみよう。その結果は4)の英文へとつながる。3)の英文は冗談としてなら面白いかもしれない。

    2) Will you marry me ?(結婚してくれませんか)
    3) Will you get married to me ?   ?????
    4) We got married last month.(私たち先月結婚しました。)

    [ 主なC-2タイプ動詞 : head,  marry,  bear,  raise,  kill,  injure,  hurt など ]

     

    結局のところCタイプは、C-1タイプもC-2タイプもともに、受動態であろう。日本語には、主語が受ける外的要因の含みを持たす動詞表現がない場合があり、それを翻訳する際、日本語では能動態的な表現になっているので、英語・日本語の間で表現に齟齬をきたすことになったのであろう。

    英語の「中間態」的な現象について3つのグループに分け眺めてきたが、中間態の定義の問題や、実際の現象をどう説明するかは難しい問題のままである。*1 準動詞での使用において能動・受動が微妙な表現や、自動詞や他動詞の本質的な性質の問題、さらに能格構文の存在など考慮に入れなければならないことが山積している。どのような問題なのかを日本語の例で少し見てみよう。

    駅のアナウンスで「ドア閉まりまーす」と「ドア閉めまーす」では、なぜか後者の方がカチンと来ることが多いようである。前者は「ドアが閉まるのか、ではしょうがないな」となるが、後者では「ドア閉めますだと、おのれちょっと待たんか!」という気分になるのである。日本語の「閉める」「閉められる」*2 「閉まる」という表現において、それぞれを能動態、受動態、中間態というふうに分析が可能なように思える。

     

    最古層の印欧語においては、態の対立は能動態と中間態であり、受動態は後に中間態から分離・発展していったのではないかと思われる。英語においては、英語学の世界を除き、今後も能動態と受動態の2つの態の対立で英語は進化していくであろう。若干説明が必要な動詞を個別に覚えることが必要にはなるが。それで十分であろう。

    最後に、サンスクリット語の文法の切り口を眺めてみよう。サンスクリット語は、ヒッタイト語同様、印欧語の最も古い言語の一つであり、インドの文法家によってどのように態が分析されていたかを知るのは有益と思われる。サンスクリット語の文法書『新・サンスクリットの基礎』菅沼晃からの引用であるが、ヨーロッパの言語の分析方法とインドの文法家のそれとは異なることを予め明記しておく。ここで述べられるAtmanepadaを中間態に相当するもの、Parasmaipadaを能動態と考えておけばよい。 

    「Parasmaipadaは「他人のためのことば」の意味で、動詞のあらわす行為・動作が結果として動作主以外の別の人にもたらされる場合である。これにたいして、Atamanepadaは「自分のためのことば」の意味で、動詞のあらわす行為・動作が結果として動作主自身にもたらされる場合である。・・・インドの文法家によれば、受動態はParasmaipadaとAtmanepadaとの対立とは別のものとしてあつかわれる。」

     

    *1  英語における準動詞の「中間態」的表現の文例
    1)  She is to blame for the mistake.(その失敗の責任は彼女にある。)
    2)  This problem is easy to solve.(この問題は解くのが簡単だ。)
    3) These shoes of yours want mending.(君の靴は修理の必要がある。)
    4)   My car needs washing.(私の車は洗う必要がある。)
    5) Kyoto is worth visiting.(京都は訪れる価値がある。)

    *2  クリストファ・バーナード氏は、『日本人の知らない英文法』のなかで、このタイプを中間態と分析している。
    I closed the door. [能動態]
    The door was closed by me. [受動態]
    The door closed. [中間態]
    中間態の定義に関しては、「ある他動詞を自動詞として用いて、他動詞として用いたときの目的語を、主語にすることができる。この条件を満たす場合、その動詞は中間動詞と呼ばれます。」としている。