LINGUA MANIA ブログ

<英単語の作り方> 5(英単語形成のプロセス)

2013.10.21

前回に引き続き、英単語の作り方のプロセスに焦点を絞り、雪だるま式に単語を長くしていく過程に目を向けてみよう。品詞の変化に注意が必要である。たとえば、以下のAの例では、名詞のglobeに接尾辞-alを付加し、形容詞globalを作っている。その形容詞に接尾辞-izeを付け加えて、動詞globalizeを作る。そこに接尾辞-ationを付加し、globalizationという名詞を作り出している。

A
1)    globe 地球(名詞)

2)    global 地球規模の(形容詞)

3)    globalize 地球的規模にする(動詞)

4)    globalization グローバル化(名詞)

 B
1)    nation 国(名詞)

2)    national 国家の(形容詞)

3)    international 国際的な(形容詞)

4)    internationalize 国際化する(動詞)

5)    internationalization 国際化(名詞)

 C
1)    friend 友達(名詞)

2)    friendly 友好的な(形容詞)

3)    unfriendly 友好的でない(形容詞)

4)    unfriendliness 友好的でないこと(名詞)

*3)の接尾辞-lyは形容詞を作る。

 D
1)    predict 予測する(動詞)

2)    predictable 予測できる(形容詞)

3)    unpredictable 予測できない(形容詞)

4)    unpredictably 予測できずに(副詞)

*4)の-接尾辞-lyは副詞を作る。

 E
1)    care 注意(名詞)

2)    careless 不注意な(形容詞)

3)    carelessness 不注意であること(名詞)

 


< 英単語の作り方 >4(英単語形成のプロセス)

2013.10.02

[接頭辞+基本語+接尾辞]

ここでは基本的な英単語の作り方のプロセスをながめていこう。英単語の形成では、その過程が鍵となるので順序に焦点をしぼろう。

 

A) unbelievableの作り方

1) believe        基本語

 2) believe+able  基本語+接尾辞

 動詞に-ableという接尾辞を付加することで、「~できる」の意味の形容詞が作られる。この段階でbelievable(信じられる)が基本語となる。

 3) un+believable  接頭辞+基本語

 kind(親切な)/unkind(不親切な)のように、接頭辞un-は形容詞に取り付け、元の語の品詞を変えず、否定の意味にする働きがある。

un+形容詞で、unbelievable(信じられない)という英単語ができあがる。

 注意) 接頭辞un-を動詞に取り付けると、別の機能を発揮する。たとえばtie(結ぶ)/untie(ほどく)のように、この場合のunは、元になる動詞の基本動作の逆の動作を表す働きがある。

 

 

B) unknownの作り方

1) know   基本語

 2) known  基本語を過去分詞に

 knowを過去分詞にする。過去分詞は形容詞であるという認識が必要。この段階で、known(知られている)が基本語になる。

 3) un+known  接頭辞+基本語

un+形容詞で、unknown(知られていない)という英単語が形成される。

 

 次の2つの英単語を比較してみよう。

 C) unavoidableの作り方

1) avoid        避ける

2) avoidable    避けられる

3) unavoidable  不可避の

 

D) inevitableの作り方

1) *evit       避ける

2) evitable      避けられる

3) inevitable    不可避の(inも否定を表す接頭辞)

 

unavoidableとinevitableの語形成の過程は同じであるが、素材が異なっている。

まずevitは英単語としては存在しない。フランス語ではeviter(避ける)、ラテン語ではevito(避ける)という単語がそれぞれ存在する。英単語形成において、このevitのような単語要素は語根と呼ばれている。このような語根は、主にラテン語やギリシャ語が多く、英語やフランス語の学習において、この2つの古典語の知識が有益となる理由の一部がここにある。

 


シュリーマンと語学習得法

2013.09.17

「いろいろ手を尽くしてはみたものの、ロシア語の教師を見つけることはできそうになかった」と、のちにトロイアを発掘することになる当時20代前半のシュリーマンは語る。「そこで、私は一人のユダヤ人を雇うことにした。週4フランで、毎晩2時間、私のところに来させて、私のロシア語の朗読を聞かせることにしたのだ。ただ、そのユダヤ人は一言もロシア語が分からなかったがね」時は1844年アムステルダムでのことであった。

 

 

その言語を全く解さない人を前に音読を実施するとは!どういうことであろうか?

 

 

実際に楽器の演奏をする人なら、このことは分かるような気がするかもしれない。耳を傾けてくれる人がいる環境と、周囲に人がいない状況での一人演奏では、演奏者の心の状態が異なる。きっとシュリーマンは、言語を音楽的に捉えていて、音読を楽器の演奏のように感じ、音楽家が何回も同じ曲を練習し最後的には楽譜なしで弾けるようになるように、繰り返し同じ個所を音読し暗誦していったのではないだろうか。相当大きな声での独奏だったらしく、賃貸物件の大家さんから数回叩きだされ引っ越しを余儀なくされたシュリーマン。のちに大富豪となるが、若いころは貧しく、「毛布を手に入れるためにたった一枚の上着を売らなければならないありさまだった」と回想している。朝の5時から夜11時まで働いていた。勉学の時間はほとんど取れずにはいたが、学問への愛情を失ったことはなかった。

 

 

ハインリッヒ・シュリーマンは、1822年9人兄弟の6番目の子としてドイツに生まれる。子供のころは貧しく教育もしっかり受けたとは言えない状況で成長し、食品会社の使い走りをして何とか食いつないでいた。その後、商売を円滑に行うためには語学が堪能でなければならないことを悟り、語学学習に邁進することになる。同時に『イーリアス』と『オデュッセイア』の研究にも勤しんでいた。内側では、日々の地道な勉学という努力を継続すること。外側では、仕事で大成功を収め巨万の富を築いたこと。啐啄の機はここに至り、シュリーマンは、子供のころからの夢であった伝説の都市トロイア発掘を成し遂げることになる。

 

 

「あらかじめ3回念入りに通読しておけば、印刷された英語の散文20ページくらいなら一言一句間違えずに教師の前で暗誦して見せることができた」と、記憶力に磨きをかけたシュリーマンは英語の小説2冊(『ウェークフィールドの牧師』ゴールドスミス、『アイヴァンホー』ウォルター・スコット)を暗記した後、その独自の方法でフランス語の小説も2冊覚えてしまった。その後、オランダ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語をどれも同じ方法で6週間以内に習得していく。18か国語を自由に読み書き話したと言われている。「その方法は簡単なものである」とシュリーマンは語る。

 

 

1)大きな声でたくさん音読すること

2)ちょっとした翻訳をすること

3)毎日一回は授業を受けること

4)興味のある対象について常に作文を書くこと

5)そしてそれを先生の指導で訂正すること

6)前の日に直した文章を暗記して、次回の授業で暗誦すること

 

 

大声でたくさん音読したためなのか、子供のころからの持病であった胸の病はオランダにおいて治ってしまったらしい。シュリーマンについて詳しく知りたい方は、『古代への情熱 ―シュリーマン自伝― 』(岡楠生訳、新潮社)、『シュリーマン ―トロイア発掘者の生涯』(エーミール・ルーとヴィヒ、白水社)などが役立つであろう。

 

 

トロイア発掘の際にちょっとしたトラブルがあったが、その時シュリーマンを助けたのはなんとオースティン・ヘンリー・レヤード(1817-1894)であった。この人物は『ギルガメシュ叙事詩』関係の発見でも一役買うのであるが、これについてはまた別の機会にみることにしよう。

 

 

晩年のシュリーマンは古代ギリシャ語で日記を綴ったり手紙を書いたりしている。心は常にホメロスとともにある。息子の名前はアガメムノン。ある時、老シュリーマンが原典で新約聖書を読んでいるところに友人がやってくる。日曜日のお祈りでもしているのかと話しかけてみると、「いや、私の知らない単語や言い回しが、ここのところにたくさん出てくるのでね!」。


< 英単語の作り方 > 3(人を表す接尾辞概論)

2013.09.08

[人を表す接尾辞概論]

「ニューヨーク市民」はNew Yorker、「ロンドン市民」はLondoner、それでは「東京都民」は?これにはTokyoiteという英単語が存在する。JapanからJapanese「日本人」への語形変化は、接尾辞-eseが関わっている。このシステムはChinaからChinese「中国人」への移行と同じである。しかし、AmericaはAmerican「アメリカ人」になる(接尾辞-an)。このように、「人」を表す接尾辞には多種多様なものがあるが、今回は、英単語の記憶と使用という点から対概念に目を向けてみよう。

 

 

能動と受動の対立を表す単語として、employer「雇う人」とemployee「雇われる人」、examiner「試験官」とexaminee「受験者」、interviewer「面接官」とinterviewee「面接を受ける人」、trainer「コーチ」とtrainee「訓練を受けている人」などがある。時々、宇宙人にさらわれる人がいるが、そういう人はabductee「さらわれた者」と言われる。必ずしも、接尾辞-eeはすべて受動的な意味を担っているわけではないが、対概念は記憶を容易にするので、能動と受動のセットになっているものは、そのまま覚えておくと有益であろう。

 

 

最近での使用頻度は減少の一途を辿り、その座をflight attendant「客室乗務員」に譲り渡すことになってしまったstewardessという単語は、「女性」を表す接尾辞-essにその衰退の源があるのであろう。近い将来、waitress「ウェイトレス」やactress「女優」やprincess「王女」も消える運命にあるのだろうか?検証はできそうもないので、ここではそれぞれの「男性」バージョンsteward, waiter, actor, princeを確認するにとどめておこう。

 

 

「ギターを弾く人」はguitaristで、「ピアノを弾く人」はpianistだが、「ドラムを叩く人」はdrummerで、「トランペットを吹く人」はtrumpeterである。楽器によるこの接尾辞-istと-erの違いは何であろうか?guitarist, bassist, pianist, violinist, cellistなどに対し、drummer, trumpeter, bagpiperなどの対立である。-ist系は、指先をこまめに使うちょっと洒落た楽器であり、一方の-er系は体全体を使いどこか人間味のある感じがする。視点を変えてみよう。

 

 

単語生成のメカニズムにおいては、語の形成過程に着目することになる。-istの場合には、元になる基本語が名詞(楽器名)であり、その基本語はギリシャ・ラテン語系が大半である。一方の-erでは、*基本語が動詞(その楽器を演奏する)であり、その動詞はゲルマン語系である。

-ist:[名詞(楽器名)+ist] → guitar(ギター)+ ist = guitarist

-er:[動詞(行為)+er]    → drum(ドラムを叩く)+ er = drummer

 

 

たとえば、drumは「ドラムを叩く」という動詞であり、または動詞として意識された結果、「動詞+er」という形を採用し、drummerという名詞ができあがる。動詞からの派生であるということは、その動作が意識されることになり、奏者と楽器の一体感が生まれ、体を張って演奏する「ドラマー」の姿が浮かび上がり、人間味が現れることになるのかもしれない。また、楽器と奏者一体型には、演奏中の「トランぺッター」の顔を想像してみれば良いだろう!日本語の「歌手」を英語で表現する場合には、sing「歌う」を基本語にすればsingerが生まれ、vocal「声」を基本語にとればvocalistが誕生することになる。さて、singerとvocalistの使い分けはいかに?

 

Collins COBUILDによると、以下の定義に。
A singer is a person who sings, especially as a jpb.

A vocalist is a singer who sings with a gruop.

WISDOMとGENIUSによると、vocalistは、instrumentalistに対する語としている。

*-erについては、いずれ細かい考察を行う予定。-erの前に来る基本語は、動詞が大部分であるが、名詞(Londoner)や形容詞(foreigner)の場合もある。


印欧語の右と左

2013.08.22

2000年のセンター試験で、印欧語における右と左に関する次の英文が出題された。

 

The ancient Romans believed that the right side of the body was the good side, while the left side held evil spirits. Their word for “right”, dexter, gave us dexterous, which means “skillful”, whereas their word for “left”, sinister, means “evil” or “wicked”. This may have created negative attitudes toward left-handedness.
But today, left-handedness is becoming more and more acceptable in society, and even considered advantageous in some sports. Because of this, left-handed people do not have to feel “left out” any more.

 

 

古代ローマ人は、身体の右側は健全なる側であり、一方左側には悪霊が宿ると信じていた。「右」を表すローマ人の言葉dexterから、英語のdexterous(器用な)という単語ができている。これに対し、「左」を表すラテン語のsinisterは、英語においては「邪悪な」や「悪意のある」の意味である。*1)このような理由で、左利きの人に対して否定的な考えが生まれたのかもしれない。

しかし、今日では、左利きは次第に社会に受け入れられるようになってきている。さらに、いくつかのスポーツでは有利であるとさえ考えられている。そういうわけで、左利きの人はもはや*2)疎外感を感じる必要はない。

 

 

*1) 単純に考えると事態はその逆であろう。人類の大半が右利きであれば、当然、右利きは「多数派」となり、「多数派(右利き)」は「我々」であり、「我々」は「正しい」ことになり、「少数派(左利き)」の「彼ら」は、「異なもの」であり、「正しくない」すなわち「邪悪な」となり、その後、確立した負の固定観念は習慣化し、因習となり、迷信として残存することになったのであろう。

*2)最後の一文の”left out”は、動詞のleftと左のleftの掛け詞。

 

 

ひと月ほどインドを旅すると、身体の右(聖なる)と左(不浄な)を意識せざるを得なくなる。食事の際、インド人は右手のみを上手に使って食べることができる。左手は、右手との因果応報的な関係ゆえ、その呪われた宿命を食事という行為の対極の生理現象の対処にその職務を全うするために、つまり心身の不浄を水で洗い清める補佐役として、その時を黙して待つのである!

 

 

18世紀後半、イギリスのウィリアム・ジョーンズは古代インドのサンスクリット語がヨーロッパの言語であるラテン語や古典ギリシャ語と起源を同じくすることを指摘した。この理論上の言語は、印欧祖語(インド・ヨーロッパ祖語)と呼ばれる。ジョーンズとこの想定言語については、改めて考察することにし、まずは「右」=「正」と「左」=「邪」に関する英語の語彙を眺めてみよう。

 

 

センター試験の英語に話題として取り上げられていたように、ラテン語のdexter(右)とsinister(左)を語源とし、英語では、それぞれdexterous(器用な)とsinister(邪悪な)という単語が存在する。

 

 

フランス語のdroite(右;正しい)という語を源にし、adroit(器用な)という英単語が生まれる。同様に、フランス語のgauche(左;不器用な)は、ほぼ「不器用な」の意味の英単語として使われている。

 

 

英語のrightには「右」と「正しい」という意味があることは即座に思い浮かぶ。2013年3月に永眠された印欧比較言語学の泰斗Calvert Watkinsの辞書The American Heritage Dictionary of Indo-European Rootsによると、rightは印欧祖語のreg-(まっすぐ動く;導く;支配する)に源があるらしい。すると、ラテン語のrego(支配する)やrex(王)とも親戚関係ということになるであろう。このreg-の概念は英単語のregular(通常の)やrule(支配する)などに受け継がれている。

 

 

蛇足として、世界には、マヤ族のツェルタル語のように「右」や「左」という語彙そのものが存在しない言語体系があるそうである。右も左もないということは、空間の認識上の切り取り方が私たちのそれとは異なることを意味している。空間の把握方法が、人類共通のものではなかったというのは衝撃である。詳細は以下参照。『もし「右」や「左」がなかったら/言語人類学への招待』(井上京子 大修館書店)

 


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