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英単語の作り方:特別編 No.4
英単語の作り方:特別編 No.4 (語尾切断)
今回のお話は、英語学習者の方全般向けです。
autumnの悲劇
autumnという英単語は一応中学1年生の時に習うようになっていて、普通は記憶するのに苦労するのであり、簡単に覚えられたという人は嘘を言っているか、又はこのスペルの余りの不自然さが逆に記憶の手助けになったはずでその異体に大いに感謝していることであろう。ただ、普通に考えると最後の -n が腑に落ちないのであり、これに謎を感じない方がおかしい。
私自身は子供の頃「最後のnは変だ。なんで読まないのに書くんですか?」と英語の先生に尋ねたところ、「くだらないこと言ってないで10回書いて覚えなさい!」と言われた記憶がある。私はそういうのが嫌いです。そして「くだらないこと」が大好きです。
複雑なプロセスは、ここでは省くとして、autumnの元々のスペルはautumnus(読み方:アウトゥムヌス)であり、英語のautumnは諸事情により、語尾が切断されたと考えておけば良い。この不自然かつ理不尽な語尾 -n
をもつ仲間を呼び出してみよう。
以下、それぞれの英単語の日本語訳は書きませんので、辞書で調べてみよう。
column < columna
damn < damnum
condemn < condemnare
hymn < hymnus
solemn < sollemnis
語尾切断現象は、以上のautumnグループに限るものではない。私たちが自然であると感じている英単語も実は、語尾切断、尻尾の切り落としの結果生まれた無情な歴史を背におっているかもしれない。
たとえば、よく耳にする人を表す名称であるPaulは元々はPaulusである。では、名称系の仲間に数名いらしてもらおう。
Paul < Paulus
Philip < Philipos
Peter < Petros
John < Johannes
Tom < Thomas
autumn系、名前系の他にも切断単語はいろいろある。
ここでは、可哀想なzooについて眺めてみよう。
このzooなる英単語は元々はzoological
gardenであり、発音は「ゾウオロジカル」、起源は由緒正しくギリシャ語で「動物」を表すzo- という語根と -logy(〜学)の形容詞形 -logicalで、zo・o・logical の2つ目の o は、単語の構成要素をつなぐ接着剤と見なしておけば良い。
zoological gardenは単語としては長いので、初めの3文字のzooだけが人々に言われるようになった。
zooに現れている -oo- のスペルはschoolなどのように基本的に「ウー」と発音する。したがってその類推からzooは「ズー」というなんとも不本意な音を担うようになってしまった。
以下は参考までに。
verb < verb(um)
sport < (di)sport
soccer < (as)soc(iation football)+ er
coed < coed(ucational)
math < math(ematics)
fridge < (re)frige(rator)
flu < (in)flu(enza)
※covid19 < corona virus disease 2019
英単語の作り方:特別編 No.3
英単語の作り方:特別編 No.3 音による意味の変化
特別編は、今回で3回目になりますが、英語以外の外国語や言語学、さらに「言葉」に興味のある方は読んでみてください。言語学的には未知の領域にも大胆に踏み込みます。これは無知ゆえにできる特権なのです。
※なお各方面の専門家の方がいらっしゃいましたら、是非私の間違いをご指摘ください。以下、早速のご指摘です。ありがとうございます。
※「特別編No.1 印欧語とセム語の語根」において私が記述した内容に対し、私の知り合いのアラビア語の先生から私にとってはたいへん有益な以下のご指摘を受けました。ありがとうございます。
「KiTaaBuの語末のuは不要」ということです。「名詞の末字の母音は格によって変化するので通常は表記しない」ということです。したがって
KiTaaBu→KiTaaB
と訂正をお願いいたします。
さて、今回は英語と日本語の関係性にも迫ります?!
英単語の作り方:特別編 No.3
知ってるつもりの英単語もいったん立ち止まって考察することで、新しい発見や記憶につながる手掛かりが見つかるかもしれない。具体的には、語源(ラテン語やギリシャ語)やシステム(接頭辞や接尾辞、音韻パターン)を知ることで、英単語の別の顔や表情が見えてくるかもしれない。
音による自動詞と他動詞の関係
たとえば、riseとraiseを混同して「上がる」と「上げる」を時々間違えてしまうという人が少なくない。この2つに何らかのシステムが透けて見えてくれば、ミスも減ることになる。今回は、英単語間の関係性において「音」に焦点を当ててみよう。
言語において最も大切なのは、音であり、スペルはその次である。riseとraiseもいったんスペルを無視して、音に注目してみよう。
rise = ライズ
raise=レイズ
両者の音の違いは「ラ」と「レ」であることが見てとれる。では、「ラ」と「レ」は何からできているのか。アルファベットの助けを借りよう。
「ラ」= r a
「レ」= r e
共通項のr を抽出すると
r × ( a + e )
両者の違いは、「あ」と「え」という母音の相違であることが分かる。riseとraiseに相当する日本語の「上がる」と「上げる」にも同様の分析を行うと、「が」ga と「げ」ge の相違から同様のパターンが現れてくる。
g × ( a + e )
以上のことから、記憶という観点に重点をおくと、「らぁいず」の「ぁ」と「あがぁる」の「ぁ」を結びつけ自動詞グループとし、同様に「れぇいず」と「あげぇる」に共通の「ぇ」を意識し他動詞グループとしておくと記憶が確実になる。
ある英単語において、その自動詞内の母音を、母音「え」に変換すると他動詞になる場合がある、とひとまず結論づけておこう。もちろん、全てに適応できるわけではないが、記憶につながる可能性と音に対して敏感になることを優先する。以下、この規則の日本語への適応は、あくまで参考までに。
日本語での例
上がる/ 上げる
開く /開ける
閉まる /閉める
はまる/ はめる
など
◯自動詞の他動詞化システム
ルール: 英単語内の母音が「え」の方が他動詞
1、rise /raise「上がる/上げる」
2、lie /lay 「横たわる/横たえる」
3a、sit /set「座る/置く」
3b、(sit /seat)「座る/座らせる)
4、fall /fell「倒れる/倒す」
*3aと3bでは、3aの関係が言語的派生関係であろう。3bは、意味的なレベルでの対応であるはず。
*ペア関係を「1、2、3b、4」として考えると、各ペアの自動詞が不規則変化であり、他動詞が規則変化である。layの過去形と過去分詞はlaidでありスペルにおいては若干の不規則性が見られるが、音声的には規則動詞であると考えることができる。
一音節のlay に対して、二音節のbelay(固定する)、delay(遅らせる)、relay(伝える)という単語においては、過去形・過去分詞ともにスペルの規則性が復活している。しかし、この一音節と二音節で表れる規則性も全てには適応できない。
以下、参考。
基準 lay-laid-laid(不規則スペル)
belay-belayed-belayed(規則スペル)
delay-delayed-delayed(規則スペル)
relay-relayed-relayed(規則スペル)
inlay-inlaid-inlaid(不規則スペル)
mislay-mislaid-mislaid(不規則スペル)
参考までに
古代インドの言語であるサンスクリット語の文法書 ‘Teach yourself
Sanskrit’から
動詞システムの説明でcausative(使役活用)について、私が今回、上で指摘したのと同じような具合に、サンスクリット語のシステムと英語のシステムの共通点を指摘している箇所がありちょっと驚きました。最近はサボっていますが数年間サンスクリット語を習っておりました。
Teach yourself Sanskritより、「使役活用」の説明部分をそのまま引用させていただきます。
p.103
Causatives exist in English, though they
are not a morphologically prominent feature of the language. ‘Fell’ is the causative of ‘fall’ ー ‘he fells the tree’ : so ‘lay’ of ‘lie’, ‘raise’ of ‘rise’.
英単語の作り方:特別編 No.2
英単語の作り方:特別編 No.2 (言語分析の方法)
以下は、頭の良い人向けです?!普通の人は読んではいけません?!
実は、私はラテン語と古典ギリシャ語の先生もしています、全く大したことはないんですが、一応やらせていただいております、感謝。
そういうわけで今回は若干専門的になります。教室でのレッスンでは専門用語など使いませんので安心してください。今回は特別です。
visitの語源分析に関して、多くの英和辞典が
[vis(見に)行く] としている。以下に各辞書の分析を眺めてみよう。
1 )ウィズダム英和辞典:[(繰り返し)見に行く]
2) プログレッシブ英和辞典:[見に行く]
3 )ジーニアス英和辞典:[見に(vis)行く(it)]
もう少し詳しい辞書になると次のようになる。
4 )英語語義語源辞典:[ラテン語visitare(=to go to see)が古フランス語を経て中英語に入った]
5)リーダース英和辞典:[OF<L(freq) 〈 viso to view; ⇒ VISION]
6)ランダムハウス英和大辞典:1225年以前. 中期英語visiten(動詞)(<古期フランス語visiter)< ラテン語visitare(visere「見に行く」の反復形; visereはvidere「見る」の反復形)
まずは、最初の3冊の分析を見てみよう。どれも似ているが1冊だけ他とは決定的な違いがある。それは『ジーニアス』の分析である。
他の2冊では、it=「行く」という特定は避けてはいるが、visit全体として「見に行く」のニュアンスを出している。ジーニアスではvis=「見る」、it=「行く」と断定している。exit(出口)=[ex (外に)+it (行く)] やtransit(通過)=[trans (向こうに)+it (行く)]の類推であろうか?
『ジーニアス』では、同一の単語の中に2つの動詞語根(この場合は「見る」と「行く」)を混在させていることになる。この分析は正しいのだろうか?
動詞語根it(行く)について眺めてみよう。これはラテン語由来のものなので、少しだけラテン語の世界を探求しよう。左がラテン語で、右がその翻訳としての英語。
eo I go
is You go
it He goes
imus We
go
itis You
go
eunt They
go
ラテン語の動詞はそれ自体に人称を表す人称接尾辞が付加されているので、eoと言えば「私は行く」という意味になる。
ラテン語では、1人称単数を基本形と考えるので、辞書ではこのeoという形が見出し語として現れる。ただし、この形では英単語の語根itを感じ取ることができない。
次にラテン語eo(行く)に接頭辞ex-(外に)を取り付け「外に行く」という意味の複合語を作ると以下のようになる。
exeo I go out
exis You go out
exit He goes out
eximus We
go out
exitis You go out
exeunt They
go out
3人称単数のexitに注目してみよう。これは英単語のexit(出口)の語源であるかのように感じるであろうが、大筋で当たっているものの微妙に異なる。ここで挙げたexitの-tは、人称接尾辞の-tであり、-i-は語根である。
英単語exit(出口)の語源は、ラテン語の名詞exitus(出口)である。このexitusは、exeoの行為名詞であり、ここで現れる「-t」は語幹の一部と考えることができる。
この「it」が英単語の中に現れる語根「it(行く)」であると考えておけば良い。英単語exitはラテン語のexitusの語尾-usを切断した形である。
接頭辞とは、もともとは前置詞(副詞)であるものが、動詞の前方に付加され、複合語を作る部品になっている場合の名称である。たとえば、exは「~から」という意味の前置詞でもあり、動詞に付加した場合には接頭辞と呼ばれる。
[ 接頭辞+動詞 ] = 動詞複合語
[ ex(外に)+eo(行く) ] = exeo (私は外に行く)
人称を3人称単数にすると以下のようになる。
[ ex(外に)+it(行く) ] = exit (彼は外に行く)
次に、3人称単数を一応ここでは基本形とし、ラテン語の複合語を[他の接頭辞+it(行く)]の組み合わせで眺めてみよう。
trans (超えて)+it (行く) = transit (渡る)
ab (離れて) +it (行く) = abi t(立ち去る)
ad (の方に) +it (行く) = adit (近づく)
per (通って) +it (行く) = perit (死ぬ)
*vis (見る) +it (行く?)
= visit (「見る/行く??」=訪問する)???
visit以外の単語の語形成をみると、[接頭辞(前置詞的要素)+動詞]の組み合わせであるが、visitでは、[動詞+動詞]の組み合わせ?になってしまっている。
英単語visitの語源は、ラテン語のvisito(しばしば見る;訪問する)である。それでは、このvisitoの語形成について考察してみよう。visitoは、viso(注意深く見る;見に行く)という単語から作られる。
さらに、このvisoは、video(見る)という単語から形成される。この辺りの事情については冒頭に挙げた(5)リーダース英和辞典の分析におけるfreqという文法用語に注意しなければならない。
このfreqは、frequentativeの略記号で日本語では「反復動詞」などと訳されている。ラテン語の文法書Gildersleeve’s Latin Grammar,
p.138に以下のような説明がある。 Frequentatives or
Intensives, denoting repeated or intense Action. These verbs end in
-tare(-sare), -itare, -titare(-sitare), and follow the spine stem (perfect
passive form).
簡単に説明すると、ある動詞に強調・反復の意味を付加したい場合、その動詞のスピヌム語幹をもとに形成することができ、それは反復動詞と呼ばれる。では、具体的に眺めてみよう。
ラテン語動詞videoのスピヌムはvisumであり、スピヌム語幹はvis-となる。この語幹に人称接尾辞を付加すると、1人称単数ではvisoが出来上がる。意味は、videoが「見る」であったのに対し、visoでは意味を強調し、「注意深く見る;見に行く」となる。
同じ要領でこのvisoをさらにもう一回、反復動詞にすると、visitoという単語が形成される。意味は、強調・反復の意味がさらに増し、「しばしば見る;訪問する」となる。
この反復動詞の形成過程において、「見る」に「行く」の意味合いが生じてきたことになる。このvisitoが、英単語visitの語源になって行く。
同Latin Grammar, p.142に、動詞の複合語についての語形成についての記述が見られる。これによると、[動詞+動詞]の複合語は、きわめて稀であり、[vis-(見る)+-it(行く)]のような例はないことも示されている。
以上のことから、英単語visitに含まれる「-it」は、「行く」の意味の語根ではなく、反復動詞の形成にともなって現れてきた「-t」であることが確認できる。『ジーニアス』の語源欄では、「見に(vis)行く」と書くつもりが、「見に(vis)行く(it)」のように、おそらく何らかの拍子に「it」が紛れ込み、誤植になってしまった可能性が高い。
改訂版では修正されていることを願うものである。というのは、もう10年以上前に出した自分の本の中で、私は『ジーニアス』の分析と同じことをやってしまったからである。自分の本は、増刷の見込みがないので、修正はできない。優秀な『ジーニアス』には、今後も増刷を続けてほしいと思う。
「行く」の意味を担っているラテン語の語根「 i (it)」が、英単語に生きている例を辞書などで調べてみよう。
exit
transit
perish
ambience
ambitious
circuit
英単語の作り方:特別編 No.1
英単語の作り方:特別編 No.1 印欧語とセム語の語根
※特別編は、私が以前どこかで書いたものに加筆、修正を加えたものが多くなると思います。予めご了承ください。
以下の文章は、アラビア語の先生に、知ったかぶり故にお叱りを受けそうですが、皆様の退屈しのぎの一つにでもなればと、お送りさせていただいております。また、何か間違っていたらどうぞご教示ください。
アラビア語やヘブライ語やアッカド語などのセム語の学習に取り掛かると誰でも、事象を切り取るその文法の切り口が印欧語(ラテン語、ギリシャ語、サンスクリット語、ドイツ語、英語、フランス語など)とはかなり異なることに驚くものである。
その一つに、子音(主に3子音)で構成される語根という概念がある。たとえば、アラビア語では「書く」という意味の語根は*ktbである、という言い方をする。この3つの子音に母音を挟むことや接辞などを付加することで単語を作り出していく。
ここでは、語根*ktbを大文字で表記して単語の構成を視覚的に確かめていこう。KaTaBaとすると「彼は書いた」となり、KaaTiBは「作家」、KiTaaBuは「本」、maKTaBは「図書館」という具合である。
意味の中心を構成する子音は硬質な石のイメージで、母音はその3つの石をつなぐ柔らかな粘土のような接着材的役割を果たしているように見える。セム語においては、このように語根を中心に語が形成されるシステムに特徴がある。
このシステムをゲルマン系英単語に応用してみると、BeaR, BoRe, BoRn,
BuRden, BiRth からBとRを抽出し、「生む;耐える」の語根は*brと言えなくはない。
SiNG, SaNG, SuNG, SoNGの語根は*sng(ngは1つの語根と考えるべきであろう)であり、GiVe,
GaVe, GiVen, GiFtの語根は*gv(fはvの無声音なので、この2つは同じものと考えることができる)である。ゲルマン系英単語の語根は2つの子音であった!
しかしながら結局のところ、これは印欧語の文法家の言う母音交代、つまりAplaut(アプラウト)であって、セム語の語根活用システムとは異なるように見える。
アプラウトについては、また別の機会に考察していこう。何れにせよ、印欧語もセム語も、それぞれの単語の意味の中核は子音が担っており、母音は補佐役と言えよう。
『中動態の世界』が売れてる?!
『中動態の世界』が売れてる?!
先日、以下のようなやりとりがあった。
知人:「ちょっと面白そうな本があるのですが、図書館に行ったら40人待ちなんですよ。」
私:「へ〜!なんて云う本ですか?」
知人:「『中動態の世界』っていうタイトルです。」
私:「あー、それなら持っていますよ。あれはいいですね。お貸ししますよ。」
知人:「ほんとですか?やった!お願いしま〜す。」
2017年 医学書院刊、
國分功一郎著、『中動態の世界 意志と責任の考古学』
至極真っ当な日常生活を営む市民が「中動態」という言葉に出会う確率は、ほぼゼロに等しいであろう。
にもかかわらず、この本が図書館で40人待ちというのは天変地異の前触れか、そうでないなら何らかの奇異なる現象に起因する一過性の帰結か、または影響力のある人物が書評などで高評価を与えていたのであろう。
『中動態の世界』は、とても読みやすい本なので、是非購入してじっくり読まれることをお勧めします。ここでは、馴染みの薄い「中動態」という言葉に焦点を絞って眺めていこう。
さて「中動態」とは一体何なのか?
私たちが英語を学ぶとき、「能動態」「受動態」という言葉に直面する。英語の先生が、英文法で「中動態」を教えることは基本的にないが「中動態」とは、「能動態」と「受動態」の中間のものと考えておけば良い。日本語で表記される場合には、「中間態」と表記されることが多いが、どちらも同じものを指す。
以前、クリストファ・バーナードが『日本人の知らない英文法』の中で英語の中間態を紹介していたことがある。中間態の定義は、難しい。数ある定義の一つとして以下を考えてみよう。クリストファによる中間態の定義は、「ある他動詞を自動詞として用いて、他動詞として用いたときの目的語を、主語にすることができる。この条件を満たす場合、その動詞は中間態と呼ばれます。」としている。以下、具体例。
I closed the door. [能動態]
The door was closed by me. [受動態]
The door closed. [中間態]
日本語では、「閉める」「閉められる」「閉まる」の分類である。
中間態的な表現は、英語でも日本語でも様々ある。
私が面白いと思うのは「知覚」に関する表現である。今回は、その中でも「視覚」について中間態的な表現を眺めてみよう。
取り上げる動詞は、lookとappearとshow。それぞれ例文は、2つ用意されている。
◎ look
You look ・・・
You look ・までの表現では、「あなたが見る」のか「あなたが〜見える」のか分からない。つまり主体なのか客体なのかは次の一言に依存する。
You look at that big cat. (あなたは、自分の目を使って見る) :能動態
You look tired. (あなたは、人の目によって見られて、人によって状態を判断されている):中間態
◎ appear
He appears wise. (人に見られ、判断される):中間態
He appeared a few minutes before the end of
the party. (彼が「現れた」のは、人に見られ確認されたからだが、「現れた」は「登場した」であり主体的行為にも思える):中間態
◎ show
You need to show your student ID here. (自分が、目的語であるものを見せる):能動態
He didn’t show up until the party was nearly over. (自分自身の姿を見せて、現れる、登場する):中間態
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以下、自分が今までに見てきた言語の中で「中間態」が態として存在して文法書の中で扱われる言語。これらの古典語においては、動詞の態はその語尾に現れる。しばしば中間態と受動態の区別は峻別できない場合がある。
古典ギリシャ語
ラテン語(かつて中間態が存在していた痕跡は形式所相動詞(デポーネント)に表れている)
サンスクリット後
ヒッタイト語