LINGUA MANIA ブログ

日常の中の外国語(3)

2021.09.30

日常の中の外国語(3)

 

コスメ<ギリシャ語

 

 

古代ギリシャにおいて、「自然界全体」を表すために「コスモス(宇宙)」という言葉が使われ始めたのがいつなのかは正確には分からないが、ギリシャにおいて紀元前4世紀の時点ではギリシャ語「コスモス」はまだ日常語にはなっていなかったらしい。

 

 

「コスモス」という言葉を初めて使ったのはピタゴラスだと言う人もいれば、他の人物だと主張する者もいて真相はつかめない。いずれにしても哲学的な考察に使われた専門用語であった。

 

 

ギリシャ語「コスモス」は、「世界、宇宙、秩序」を表す。反対語は「カオス」であり、これは、「無秩序、混沌、乱れ」を意味する。

 

 

「カオス」は、英語ではchaosと表記して英語風の読みで「ケイオス」という音になる。英単語で、chと綴られ「かきくけこ」的な音の場合は、その単語の語源はギリシャ語であると考えておけば良い。

※chのスペル→ギリシャ語起源の例

1 school 元々は「暇」の意味

2 synchronize 「同時に起こる」

3 chronic 「慢性的な」

4 chorus 「コーラス」

 

 

日本では化粧品のことを「コスメ」という場合もあり、これは英語の cosmeticを短くし、カタカナ表記にしたものである。

 

 

本来ある自然な顔により秩序をもたらし、世界をより美しく飾り立ててくれる小宇宙を磨き上げるのに一役買って、世の中をハッピーにしてくれるのが「コスメ」である。

 

 

元のギリシャ語では「コスモス」という発音で濁らないが、英語cosmosでは「コズモス」のように濁って発音する。したがって 英単語cosmeticも「コズメティック」であるが、「コズメ」ではちょっと汚く響くので恐らく美を追求した結果「コスメ」という日本語が誕生したのであろう。

 


日本語入門(1)

2021.09.16

日本語入門(1)

 

「雨」は何と読むのか?

 

 

私たちの悪い癖で、顔が外国人の人に英語の質問などをして、その後、仲間の日本人に「だってネイティブがこう言ってたよ、だから絶対でしょ」などと言ってしまう傾向がある。そのネイティブの説明は本当に正しいのだろうか?

 

 

視点を変えてみよう。外国人が私たち日本人に日本語の質問をする。私たちは日本語を知っているつもりだから、なんとか質問に答えたとする。それ本当に正しいのだろうか?

 

 

日本人だからといって日本語(国語)の問題がいつも満点だろうか?

本当に日本語で言いたいことを効果的に表現することが会話でも書き言葉でもできるだろうか?

 

 

もちろん正しい「語法」という概念自体かなり特定しにくいし、「文法は慣用に基づく」ものであり、そこに法則性が発見され、理論的に文法化され、「正しいとされるもの」が現れて来る。

 

 

この「正しいとされるもの」=「論理的法則性」=「文法」を知ることで、私たちの言語活動が有益なものになれば文法を知る価値があることになるが、「学校で習う日本語文法」がほとんど何の役にも立たないことは私たちは経験値として知っている。

 

 

少なくとも英文法を学べば簡単な英文を書いたり読んだりできるようになるという意味において、日本語文法を知ることで日本語が上手くなるということはないであろう。

 

 

いっそのこと、日本語には「文法はない」とし、一例一例、この場合には「こう言う」という「自然な言い回し」を押し付けそれを「自然」に思うように学習者に強制すべきなのだろうか?

 

 

それとも、どのような日本語も雑草のように自然のなすがままに放置しておくべきなのだろうか?

 

 

私たち日本人が知ってるつもりの日本語に少しだけ疑問を呈してみよう。事例から法則性は発見されるだろうか?私たちは何に基づいて同じ言葉の読み方の使い分けをしているのだろうか?

 

 

次の二人の会話のやりとりを聞いてみよう。

 

 

Aさん:日本語勉強中のアメリカ人、日本語中級

Bさん:日本語を知ってるつもりの日本人おっさん、英語初級

 

 

 

 

A「雨」は、あなたは何と読むのでしょうか?

B 「あめ」と読むんだよ。もう少し勉強したまえ!

 

 

A ありがとう。では「小雨」は「こあめ」ですね。

B そうとも読むかもしれないけど、普通は「こさめ」と読むよ。

A おお、でも、それでは「雨」は「さめ」ですか?海のサメと同じ。

 

 

A いやその〜、時々音が変わるんだよ。「小雨」は「こさめ」って言うんだよ、暗記して!

 

 

B ありがとう。では「雨宿り」は「あめ・やどり」ですか、それとも「さめ・やどり」ですか、すいません」

 

 

A 「雨宿り」は「あまやどり」と読むんだよ。いろいろあるんだ、それも暗記してね〜。

B ありがとう。では、勘がいいですか、「雨量」の場合は、「あま・りょう」ですか?

 

 

A いやいや。ひっく、んっんー、ひっく、あれ、しゃっくりが出てきたっ、ひっく、うっ「雨量」は「うりょう」だよ。要するに、いろいろあるんですよ、日本語は難しいのですよ!

 

 

B しゃっくりの時、スプーン一杯の砂糖があなたを治します、では、お先に失礼いたしました。

 

 

 

 

以下、雨の読み方(1〜4)に音韻上の法則があるのだろうか?もし法則性があるのなら、それを文法と呼ぼう。法則性を発見できなければ、一つひとつ記憶する必要がある。

 

 

1 あめ

大雨(おおあめ)

雨男(あめおとこ)

雨風(あめかぜ)

長雨(ながあめ)

 

 

2 さめ

小雨(こさめ)

春雨(はるさめ)

霧雨(きりさめ)

秋雨(あきさめ)

 

 

3 あま

雨宿り(あまやどり)

雨戸(あまど)

雨傘(あまがさ)

雨雲(あまぐも)

雨水(あまみず)

雨合羽(あまがっぱ)

雨足(あまあし)

雨間(あまあい)

雨音(あまおと)

 

 

4 う

雨量(うりょう)

雷雨(らいう)

豪雨(ごうう)

梅雨(ばいう=つゆ)

雨季(うき)

晴雨(せいう)

暴風雨(ぼうふうう)

晴耕雨読(せいこううどく)

 


日常の中の外国語(3)

2021.09.08

日常の中の外国語(3)

 

 

今回は、covid19 関係を少し眺めてみよう。専門的な用語や医学用語はラテン語とギリシャ語の要素を使って日々作られている。

 

 

1) ウィルス>ラテン語

2) デルタ株>ギリシャ語

 

 

 

 

1)「ウィルス」という単語は、英語ではvirusと書き「ヴァイルス」のように発音する。

 

 

英語では、[子音+母音+子音+母音]で単語が構成された場合に、2番目の母音は基本的に「アルファベット読み」になる。

 

 

[ v + i  + r + u] + s

二文字目の i を「アイ」と読むので全体が「ヴァイルス」となる。

 

 

「v」が英語の「w」の音価である点を除けば、ラテン語のvirusはいわゆるローマ字読みで「ウィルス」となる。古典期のvirus の意味は「粘液、毒、苦しみ」などである。

 

 

virusが、所謂「ウィルス」になるのは1892年にその最初の記述が見られ、その後、1932年からの電子顕微鏡の登場とその改良、解析技術の向上を待たねばならない。この時に初めて私たちを苦しめてきた謎の病気を引き起こす「その原因」を目で見て、特定することが可能となった。

 

 

 

 

母音a i u e oの2つの読み方

◯アルファベット読み

→エイ、アイ、ユー、イー、オウ

 

 

◯ローマ字読み

→ア、イ、ウ、エ、オ

 

 

例)

aをローマ字読み hat (ハット)

aをアルファベット読み hate (ヘイト)

 

 

 

 

2) デルタ株

 

 

特定の国で変異したウィルスに、しばらくの間はその国名を付けて「〜株」とマスコミなどは発表していたが、それは偏見を生むという理由で、その変異ウィルスにギリシャ語のアルファベットを順次付けていくことになったという経緯がある。

 

 

「デルタ株」は、ギリシャ語アルファベット4番目の「デルタ」が語源。

 

 

2021年9月現在、4番目のデルタ株が有名だが、変異株は本当はまだまだたくさんあり、デルタ株以降も増え続けている。

 

 

以下、ギリシャ語アルファベットの順で、「発音」はおそらく日本で普及するであろう読みを推測して表記してある。

 

 

デルタ株が最も有名になったのはその性質から生じる影響力による。ラムダ株も少し有名になりかけた。現在はミュー株。

 

 

1 アルファ株<イギリス

2 ベータ株<南アフリカ

3 ガンマ株<ブラジル

4 デルタ株<インド

5 エプスィロン株<アメリカ

6 ゼータ株<ブラジル

7 エータ株<複数国

8 テェータ株<フィリピン

9 イオータ株<アメリカ

10 カッパ株<インド

11 ラムダ株<ペルー

12 ミュー株<コロンビア?

 

 

*9/2付けの情報では日本で「ミュー株 (mu variant)」確認とある。

Japan confirmed its first two cases of COVID-19′s mu variant, designated by the World Heath Organization as a variant of interest, in June and July during airport screenings, the health ministry has said.

 

 

 

次の13からは、今後出現するであろう変異株の名称の想定。

 

 

 

13 ニュー株

14 クシー株(これは「クサイ」と読ませるかも)

15 オミクロン株

16 パイ株

17 ロー株

18 シグマ株

19 タウ株

20 ユプスィロン株

21 フィー又はファイ株

22 キー又はカイ株

23 プスィ又はプサイ株

24 オメガ株

 

 

ギリシャ語アルファベットは24文字なので、25番目の変異株からはおそらく星座の名称またはギリシャ神話の神々の名前が登場するような気がする。

 

 


文法とは何か?

2021.09.01

文法とは何か?(1)

 

 

「文法」とは何か、という点において様々な角度からそれに光を当て、それに応じて切り取られる現実、浮き彫りになって見えてくるものを考察していこう。

 

 

そもそも私たちが俗に「文法」と言っているものは、何に基づいているのかという根本に目を向けた東大の入試問題を眺めてみよう。

 

 

Traditional grammar was developed on the basis of Greek and Latin, and it was subsequently applied, with minimal modifications and often uncritically, to the description of a large number of other languages.

 

 

伝統文法は、ギリシャ語とラテン語を基礎として発展していった。

その後、最小限の修正を加え、しばしば無批判的に、他の多くの言語の説明に応用されていった。

 

 

But there are many languages which, in certain respects at least, are strikingly different in structure from Latin, and Greek and the more familiar languages of Europe such as French, English and German.

 

 

しかし、少なくともいくつかの点において、ラテン語やギリシャ語、またもっと馴染みのある言語であるフランス語や英語、ドイツ語などとは構造上著しく異なる多くの言語がある。

 

 

 

 

One of the principal aims of modern linguistics has therefore been to construct a theory of grammar which is more general than the traditional theory ー one that is appropriate for the description of all human languages and is not biased in favor of those languages which are similar in their grammatical structure to Greek and Latin.

 

 

したがって、現代の言語学の主要な目的の一つは、伝統文法よりも普遍的な文法理論を構築することである。それは、あらゆる人間の言語に適応可能で、その上、構造上ギリシャ語やラテン語に似ている言語を優先することがないような文法理論である。

 

 

————————–

 

 

そういうわけで、「英文法」というものはラテン語とギリシャ語の文法に基づいているので、英語のみを学習している人にとっては謎めいた文法用語もある。

 

 

たとえば「不定詞」。何がどう「不」なのであろうか?「不定詞」を学んで「不」であるようなマイナス要素を感じるだろうか?

 

 

英語なら構造上ラテン語やギリシャ語に少しは似ているので許容範囲ではあるが、日本語ではどうだろう。「主語」という文法用語はどうだろう。「象は鼻が長い」という文はまともな日本語であるが、この場合の「主語」は何か?また、その答えの根拠はどこにあるのか?

 

 

駅のホームであと一歩のところで電車のドアが閉まりかけ、アナウンス。「ドア閉まりまーす。」ん、しょうがないかとなるけれど、

「ドア閉めまーす。」では、なぜかカチンと来るのはなぜか?

「閉まる」、「閉める」、「閉められる」の文法的説明は、どうか?

 

 

「文法とは何か?」シリーズでは、以上のような問題を考察していく予定。

 


日常の中の外国語(2)

2021.09.01

日常の中の外国語(2)

 

前回の「日常の中の外国語(1)」では、いわゆる西暦を表すA. D. やNo. さらにa.m. p.m. が、全てラテン語であることを確認済み。

 

 

今回は、ドイツ語とフランス語を代表して、より卑近な例として「アルバイト」、「サボる」を取り上げてみよう。

 

 

カタカナに化けているので、正体を見極めるのは難しい。私たちの悪い癖でカタカナは何でも英語であると思いがちであるので慎重に。

 

 

1) アルバイト

「アルバイト」は、ドイツ語の名詞Arbeit をその読み通りカタカナにしたもの。Arbeitは、「仕事、労働」の意味で、英語のworkに相当する。接尾辞を付けてarbeiten(働く)とし、人称接尾辞を変化させれば動詞として機能する。

 

 

英語で「アルバイト」は、part-time jobが一般的。part-timeを副詞として、work part-time(アルバイトをする)とも言う。他に、moonlight(アルバイトする)などの表現もある。

 

 

 

 

2) サボる

「サボる」は、フランス語のsabotageという単語の前半部分「サボ-」

と日本語の動詞を形成するための造語要素

「-る」で作られている。

 

 

sabotageは、「故意に仕事をぞんざいに行なったり、仕事に欠かせない機械を破損させたりして経営者側にダメージを与えること」を意味する。

 

 

この造語が日本で使用され始めた当時、なんらかの理由で、sabotage というフランス語が新鮮であったのであろう。

 

 

造語要素後半の「〜る」は、繁殖力旺盛な造語要素なので日本語の単語が日々生まれている。以下、英単語の要素と「〜る」の組み合わせを見てみよう。

 

 

「ググる」<google

「ディスる」<disrespect

「バグる」<bug

「パニクる」<panic

 

 

次に、日本語要素+「〜る」を眺めてみよう。

 

 

「事故る」

「こくる」

「拒否る」

「愚痴る」

 

 

他にもたくさんあり、自分で作って使ってみると良い。たとえば、ネット的には「メリカる」、「アマゾる」、「ウィキる」など。食事的には、「マックる」、「スタバる」、「ドトる」など。

 

 

言葉は使うことに意義がある。今、使われている言葉は新鮮であり、それゆえにその言葉はすぐに痛み、腐り、廃れていく。

 

 

だからこそ、地域別に、また古代などに使用された言語の研究が人々の生活や思考法を探る最大の手掛かりになり、そこに今では失われた大切な知恵を見つけることができるかもしれない。

 

 

同時に今、私たちが使っている日本語は100年後、200年後には死語だらけになっていて、専門の辞書がなければ解読不能にっているかもしれない。または日本語が絶滅危惧言語になっている可能性もある。それに伴い日本人という概念も相当に変化しているであろう。