LINGUA MANIA ブログ

<英単語の作り方>15(接頭辞入門:数字)

2014.06.19

接頭辞入門(その8)

グループCを拡張して、今回は「2」に関して眺めていこう。

◎ラテン語系bi-

ラテン語のbis(=twice)に由来。bicycleに含まれているbi-の形で接頭辞として機能する。「二か国語を話す人」はbilingual、「二足動物」はbiped、「双眼鏡」はbinocular、「重婚」はbigamy、「二進法」はthe binary system、「二院制」はthe bicameral systemという。bicameralといえば、ジュリアン・ジェインズのThe Origin of Consciousness in the Breakdown of the Bicameral Mindという人間の意識の起源に迫った面白い本がある。

「10億」を表すにはbillionという単語がある。このbillionが「10億」の意味になって行く過程は省くが、以下のように覚えておくと良い。thousandは1,000、millionは1,000,000、billionは1,000,000,000であり、millionの次(2番目)のカンマがbillionであり「10億」であると記憶しておくと有益である。

 

◎ラテン語(ギリシャ語)系 duo- ( do-, dou-, du-, di- )

ラテン語のduo(=two)に由来。「二重」はdouble、「二つの;二重の」はdual、「二重奏」はduet、「二重奏の奏者」はduo、「二重の;複製の」はduplicateという。

doubt(疑い)は、ドイツ語では Zweifelと言う。このZweiは「2」の意味。何かについて、正しいのか間違っているのか、2つの揺れる心を表す。

「揺れる心」と言えば、dilemmaという単語がある。二者択一を迫られて板挟みの状態を表す。

 

接頭辞入門(その9)に続く

 


<英単語の作り方>14(接頭辞入門:数字)

2014.06.11

接頭辞入門(その7)

グループCの拡張

数字の[1、2、3]を表すグループC [unicycle, bicycle, tricycle ]の拡張を行なっていこう。先ずはラテン語と古典ギリシャ語の基数1~10をざっと眺めてみよう。

ラテン語基数1~10

1 unus
2 duo
3 tres
4 quattuor
5 quinque
6 sex
7 septem
8 octo
9 novem
10 decem

古典ギリシャ語基数1~10

1 heis
2 dyo
3 treis
4 tettares
5 pente
6 hex
7 hepta
8 octo
9 ennea
10 deca

 

次に、実際に英語の接頭辞として機能する形を見てみよう。今回は「1」の形に焦点を絞ることにしよう。

接頭辞「1」について

◎ラテン語系 uni-

ラテン語の「1」を表すunusから、英語の接頭辞 uni-が派生する。簡単なものとしては、unicycle (一輪車)、unicorn (一角獣)、unique (唯一の)、unit (単位)、unite (一つにする)などがある。

uniformは、「一つの形」という意味から形容詞としては「同一の」という意味になり、名詞としては「制服」の意味にもなる。unanimousは、「一つの心」というのが本来の意味で「満場一致の」などと訳される。

 

◎ギリシャ語系  mono-

ギリシャ語の monos (唯一の)に由来。ギリシャ語系の「1」は、このmono-が担当する。卑近な例として、monorail (モノレール:レールが一つ)、monochrome(単色の)、monopoly(独占)、monotonous(単調な)などがある。

monarchは、[mon + arch(支配)]で、「君主;独裁者」の意味。monk(修道士)の原義は「一人で生きている者」。そのmonkは、monastery(修道院)で生活している。

 

ここからは、いわゆる接頭辞として分類されるかは微妙な問題が残るが、「1」を感じ取れる接頭辞的な役割のパーツとして記憶しておくと良い。

 

〇ラテン語系 sol-

sol-は、ラテン語solus(=alone)に由来。
「独奏」はsolo、「孤独」はsolitude、「唯一の」はsole、「独白」はsoliloquyなど、「1」を感じ取ることができる。

 

〇ギリシャ語系 proto-

ギリシャ語protos(=first)に由来。「原型;試作品」のことはprototypeという。protocolは、「議定書;協定」などの意味のほかに、「手順」に近い意味で用いられる。

 

〇ラテン語系 prim-

ラテン語primus(=first)に由来。「総理大臣」がprime ministerであることから、primeの「第一の;主要な」の意味が見て取れる。「原始の」を表すには、primevalやprimitiveなどがある。「主要な」は、primaryやprincipalがある。prince(王子)の原義は「第一の者」。

 

〇 one

接頭辞ではないが、oneを組み込んだ単語を眺めてみよう。先ずはalone。aloneは、[ all one ]で「全く一」となり、「ひとりで;ただ~だけ」の意味となる。ここで表れてきているal- は、almighty (全能の)やalmost (ほとんど)の中にも生きている。

atonementという単語がある。[ at one + -ment (名詞語尾)]という分析で、意味は being at one with God and manとなる。「神と自分自身が一体になること」で、「罪を償うこと」を表す。

 

接頭辞入門(その8)へ続く

 

 

 


言語と音楽(その1)

2014.05.31

ガンジス河はそこにあり、昔と変わらず人々の穢れを取り除いていた、自らは泥まみれで。バラナシの迷宮のようなストリートを右に左に上に下に進んでいくと、「ここです。」とオートリクシャー運転手の青年は言う。そこはタブラ奏者Bagchiの自宅兼音楽教室であった。「ようこそ!さあ、中へお入りください。」ここで、プライヴェートコンサートを行ってくれることになっている。

 

こぼれそうな笑みとともにチャイが運ばれてきた。「音楽を聴きたいそうですね。ちょっと待ってくれたまえ。いま仲間を呼んでみるよ。」電話でミュージシャン仲間に連絡を取っている様子。チャイがもう一杯運ばれ、甘いお菓子を楽しむこと30分、一人のでっぷりしたおっさんが眠そうに姿を見せた。「やあ!」

 

二人目の音楽家が現れるまでにはさらに30分。ひょろっとした若者が元気とともに「やあ!」。Bagchiは、壁に貼られたインドの神々に何やらお祈りを始める。お香の香りが狭い部屋に広がっていく。部屋の片隅でシタールが音を広げる。それは妖艶な妖精を背に乗せたお香のように滑らかに空気の上に遊ぶ。Bagchiのタブラがいつの間にかシタールの流れに硬質さを据える、こぼれる香りをとらえるように。新たな音がそれに加わる。ひょろっとした青年は笛を吹いていた。ひらひらと漂う煙のように、その音の一つ一つにインドの神々が鎮座ましましていた。

 


<英単語の作り方>13 (接頭辞入門:数字)

2014.04.28

接頭辞入門(その6)

グループC:unicycle, bicycle, tricycle

それぞれの単語に共通なのは -cycleの部分で、ここでは「円;車輪」の意味。uni-、bi-、tri- は、それぞれ「1」、「2」、「3」を表す。この数字的部品は厳密な意味では、接頭辞ではないかもしれないが、機能としては接頭辞と同じ働きをしているので、したがって、ここでは接頭辞と見なすことにしておこう。

接頭辞uni-:「1」を表す。

unicycle:一輪車
unicorn:一角獣
uniform:「1つの形」→ 征服、一様の
unit:単位
unique:唯一の
unite:一つにする

 

接頭辞bi-「2」を表す。

bicycle:二輪車=自転車
bilingual:二か国語を使う
bimonthly:「2か月に1回」→ 隔月の
bicolored:二色の bigamy:重婚

 

接頭辞tri-:「3」を表す。

tricycle:三輪車
triangle:三角形
trio:三人組
triple:三倍の
tripod:三脚

接頭辞入門(その7)に続く


visitの語源分析について

2014.03.26

visitの語源分析に関して、多くの英和辞典が [vis(見に)行く] としている。以下に各辞書の分析を眺めてみよう。

1 )ウィズダム英和辞典:[(繰り返し)見に行く]

2) プログレッシブ英和辞典:[見に行く]

3 )ジーニアス英和辞典:[見に(vis)行く(it)]

もう少し詳しい辞書になると次のようになる。

4 )英語語義語源辞典:[ラテン語visitare(=to go to see)が古フランス語を経て中英語に入った]

5)リーダース英和辞典:[OF<L(freq) 〈 viso to view; ⇒ VISION]

6)ランダムハウス英和大辞典:1225年以前. 中期英語visiten(動詞)(<古期フランス語visiter)< ラテン語visitare(visere「見に行く」の反復形; visereはvidere「見る」の反復形)

 

まずは、最初の3冊の分析を見てみよう。どれも似ているが1冊だけ他とは決定的な違いがある。それは『ジーニアス』の分析である。

 

他の2冊では、it=「行く」という特定は避けてはいるが、visit全体として「見に行く」のニュアンスを出している。ジーニアスではvis=「見る」、it=「行く」と断定している。exit(出口)=[ex (外に)+it (行く)] やtransit(通過)=[trans (向こうに)+it (行く)]の類推であろうか?

 

『ジーニアス』では、同一の単語の中に2つの動詞語根(この場合は「見る」と「行く」)を混在させていることになる。この分析は正しいのだろうか?

 

動詞語根it(行く)について眺めてみよう。これはラテン語由来のものなので、少しだけラテン語の世界を探求しよう。左がラテン語で、右がその翻訳としての英語。

eo      I   go
is    You  go
it     He  goes
imus     We  go
itis     You  go
eunt     They  go

 

ラテン語の動詞はそれ自体に人称を表す人称接尾辞が付加されているので、eoと言えば「私は行く」という意味になる。ラテン語では、1人称単数を基本形と考えるので、辞書ではこのeoという形が見出し語として現れる。ただし、この形では英単語の語根itを感じ取ることができない。

 

次にラテン語eo(行く)に接頭辞ex-(外に)を取り付け「外に行く」という意味の複合語を作ると以下のようになる。

exeo                I   go out
exis               You  go out
exit                He  goes out
eximus         We  go out
exitis             You  go out
exeunt         They  go out

 

3人称単数のexitに注目してみよう。これは英単語のexit(出口)の語源であるかのように感じるであろうが、大筋で当たっているものの微妙に異なる。ここで挙げたexitの-tは、人称接尾辞の-tであり、-i-は語根である。

 

英単語exit(出口)の語源は、ラテン語の名詞exitus(出口)である。このexitusは、exeoの行為名詞であり、ここで現れる「-t」は語幹の一部と考えることができる。。この「it」が英単語の中に現れる語根「it(行く)」であると考えておけば良い。

 

接頭辞とは、もともとは前置詞(副詞)であるものが、動詞の前方に付加され、複合語を作る部品になっている場合の名称である。たとえば、exは「~から」という意味の前置詞でもあり、動詞に付加した場合には接頭辞と呼ばれる。

 

[ 接頭辞+動詞 ]       =     動詞複合語
[ ex(外に)+eo(行く) ] = exeo (私は外に行く)

人称を3人称単数にすると以下のようになる。
[ ex(外に)+it(行く) ] = exit (彼は外に行く)

 

次に、3人称単数を一応ここでは基本形とし、ラテン語の複合語を[他の接頭辞+it(行く)]の組み合わせで眺めてみよう。

trans (超えて)+it (行く)      = transit (渡る)
ab (離れて)     +it (行く)      = abi t(立ち去る)
ad (の方に)     +it (行く)      = adit (近づく)
per (通って)   +it (行く)       = perit (死ぬ)
*vis (見る)    +it (行く?)  = visit (「見る/行く??」=訪問する)???

 

visit以外の単語の語形成をみると、[接頭辞(前置詞的要素)+動詞]の組み合わせであるが、visitでは、[動詞+動詞]の組み合わせ?になってしまっている。

 

英単語visitの語源は、ラテン語のvisito(しばしば見る;訪問する)である。それでは、このvisitoの語形成について考察してみよう。visitoは、viso(注意深く見る;見に行く)という単語から作られる。さらに、このvisoは、video(見る)という単語から形成される。この辺りの事情については冒頭に挙げた(5)リーダース英和辞典の分析におけるfreqという文法用語に注意しなければならない。

 

このfreqは、frequentativeの略記号で日本語では「反復動詞」などと訳されている。ラテン語の文法書Gildersleeve’s Latin Grammar, p.138に以下のような説明がある。 Frequentatives or Intensives, denoting repeated or intense Action. These verbs end in -tare(-sare), -itare, -titare(-sitare), and follow the spine stem (perfect passive form).

 

簡単に説明すると、ある動詞に強調・反復の意味を付加したい場合、その動詞のスピヌム語幹をもとに形成することができ、それは反復動詞と呼ばれる。では、具体的に眺めてみよう。

 

ラテン語動詞videoのスピヌムはvisumであり、スピヌム語幹はvis-となる。この語幹に人称接尾辞を付加すると、1人称単数ではvisoが出来上がる。意味は、videoが「見る」であったのに対し、visoでは意味を強調し、「注意深く見る;見に行く」となる。同じ要領でこのvisoをさらにもう一回、反復動詞にすると、visitoという単語が形成される。意味は、強調・反復の意味がさらに増し、「しばしば見る;訪問する」となる。

 

この反復動詞の形成過程において、「見る」に「行く」の意味合いが生じてきたことになる。このvisitoが、英単語visitの語源になって行く。

 

同Latin Grammar, p.142に、動詞の複合語についての語形成についての記述が見られる。これによると、[動詞+動詞]の複合語は、きわめて稀であり、[vis-(見る)+-it(行く)]のような例はないことも示されている。

 

以上のことから、英単語visitに含まれる「-it」は、「行く」の意味の語根ではなく、反復動詞の形成にともなって現れてきた「-t」であることが確認できる。『ジーニアス』の語源欄では、「見に(vis)行く」と書くつもりが、「見に(vis)行く(it)」のように、おそらく何らかの拍子に「it」が紛れ込み、誤植になってしまった可能性が高い。改訂版では修正されていることを願うものである。というのは、もう10年以上前に出した自分の本の中で、私は『ジーニアス』の分析と同じことをやってしまったからである。自分の本は、増刷の見込みがないので、修正はできない。優秀な『ジーニアス』には、今後も増刷を続けてほしいと思う。

 

「行く」の意味を担っているラテン語の語根「 i (it)」が、英単語に生きている例を辞書などで調べてみよう。
exit
transit
perish
ambience
ambitious
circuit