LINGUA MANIA ブログ

< 英単語の作り方 > 3(人を表す接尾辞概論)

2013.09.08

[人を表す接尾辞概論]

「ニューヨーク市民」はNew Yorker、「ロンドン市民」はLondoner、それでは「東京都民」は?これにはTokyoiteという英単語が存在する。JapanからJapanese「日本人」への語形変化は、接尾辞-eseが関わっている。このシステムはChinaからChinese「中国人」への移行と同じである。しかし、AmericaはAmerican「アメリカ人」になる(接尾辞-an)。このように、「人」を表す接尾辞には多種多様なものがあるが、今回は、英単語の記憶と使用という点から対概念に目を向けてみよう。

 

 

能動と受動の対立を表す単語として、employer「雇う人」とemployee「雇われる人」、examiner「試験官」とexaminee「受験者」、interviewer「面接官」とinterviewee「面接を受ける人」、trainer「コーチ」とtrainee「訓練を受けている人」などがある。時々、宇宙人にさらわれる人がいるが、そういう人はabductee「さらわれた者」と言われる。必ずしも、接尾辞-eeはすべて受動的な意味を担っているわけではないが、対概念は記憶を容易にするので、能動と受動のセットになっているものは、そのまま覚えておくと有益であろう。

 

 

最近での使用頻度は減少の一途を辿り、その座をflight attendant「客室乗務員」に譲り渡すことになってしまったstewardessという単語は、「女性」を表す接尾辞-essにその衰退の源があるのであろう。近い将来、waitress「ウェイトレス」やactress「女優」やprincess「王女」も消える運命にあるのだろうか?検証はできそうもないので、ここではそれぞれの「男性」バージョンsteward, waiter, actor, princeを確認するにとどめておこう。

 

 

「ギターを弾く人」はguitaristで、「ピアノを弾く人」はpianistだが、「ドラムを叩く人」はdrummerで、「トランペットを吹く人」はtrumpeterである。楽器によるこの接尾辞-istと-erの違いは何であろうか?guitarist, bassist, pianist, violinist, cellistなどに対し、drummer, trumpeter, bagpiperなどの対立である。-ist系は、指先をこまめに使うちょっと洒落た楽器であり、一方の-er系は体全体を使いどこか人間味のある感じがする。視点を変えてみよう。

 

 

単語生成のメカニズムにおいては、語の形成過程に着目することになる。-istの場合には、元になる基本語が名詞(楽器名)であり、その基本語はギリシャ・ラテン語系が大半である。一方の-erでは、*基本語が動詞(その楽器を演奏する)であり、その動詞はゲルマン語系である。

-ist:[名詞(楽器名)+ist] → guitar(ギター)+ ist = guitarist

-er:[動詞(行為)+er]    → drum(ドラムを叩く)+ er = drummer

 

 

たとえば、drumは「ドラムを叩く」という動詞であり、または動詞として意識された結果、「動詞+er」という形を採用し、drummerという名詞ができあがる。動詞からの派生であるということは、その動作が意識されることになり、奏者と楽器の一体感が生まれ、体を張って演奏する「ドラマー」の姿が浮かび上がり、人間味が現れることになるのかもしれない。また、楽器と奏者一体型には、演奏中の「トランぺッター」の顔を想像してみれば良いだろう!日本語の「歌手」を英語で表現する場合には、sing「歌う」を基本語にすればsingerが生まれ、vocal「声」を基本語にとればvocalistが誕生することになる。さて、singerとvocalistの使い分けはいかに?

 

Collins COBUILDによると、以下の定義に。
A singer is a person who sings, especially as a jpb.

A vocalist is a singer who sings with a gruop.

WISDOMとGENIUSによると、vocalistは、instrumentalistに対する語としている。

*-erについては、いずれ細かい考察を行う予定。-erの前に来る基本語は、動詞が大部分であるが、名詞(Londoner)や形容詞(foreigner)の場合もある。


印欧語の右と左

2013.08.22

2000年のセンター試験で、印欧語における右と左に関する次の英文が出題された。

 

The ancient Romans believed that the right side of the body was the good side, while the left side held evil spirits. Their word for “right”, dexter, gave us dexterous, which means “skillful”, whereas their word for “left”, sinister, means “evil” or “wicked”. This may have created negative attitudes toward left-handedness.
But today, left-handedness is becoming more and more acceptable in society, and even considered advantageous in some sports. Because of this, left-handed people do not have to feel “left out” any more.

 

 

古代ローマ人は、身体の右側は健全なる側であり、一方左側には悪霊が宿ると信じていた。「右」を表すローマ人の言葉dexterから、英語のdexterous(器用な)という単語ができている。これに対し、「左」を表すラテン語のsinisterは、英語においては「邪悪な」や「悪意のある」の意味である。*1)このような理由で、左利きの人に対して否定的な考えが生まれたのかもしれない。

しかし、今日では、左利きは次第に社会に受け入れられるようになってきている。さらに、いくつかのスポーツでは有利であるとさえ考えられている。そういうわけで、左利きの人はもはや*2)疎外感を感じる必要はない。

 

 

*1) 単純に考えると事態はその逆であろう。人類の大半が右利きであれば、当然、右利きは「多数派」となり、「多数派(右利き)」は「我々」であり、「我々」は「正しい」ことになり、「少数派(左利き)」の「彼ら」は、「異なもの」であり、「正しくない」すなわち「邪悪な」となり、その後、確立した負の固定観念は習慣化し、因習となり、迷信として残存することになったのであろう。

*2)最後の一文の”left out”は、動詞のleftと左のleftの掛け詞。

 

 

ひと月ほどインドを旅すると、身体の右(聖なる)と左(不浄な)を意識せざるを得なくなる。食事の際、インド人は右手のみを上手に使って食べることができる。左手は、右手との因果応報的な関係ゆえ、その呪われた宿命を食事という行為の対極の生理現象の対処にその職務を全うするために、つまり心身の不浄を水で洗い清める補佐役として、その時を黙して待つのである!

 

 

18世紀後半、イギリスのウィリアム・ジョーンズは古代インドのサンスクリット語がヨーロッパの言語であるラテン語や古典ギリシャ語と起源を同じくすることを指摘した。この理論上の言語は、印欧祖語(インド・ヨーロッパ祖語)と呼ばれる。ジョーンズとこの想定言語については、改めて考察することにし、まずは「右」=「正」と「左」=「邪」に関する英語の語彙を眺めてみよう。

 

 

センター試験の英語に話題として取り上げられていたように、ラテン語のdexter(右)とsinister(左)を語源とし、英語では、それぞれdexterous(器用な)とsinister(邪悪な)という単語が存在する。

 

 

フランス語のdroite(右;正しい)という語を源にし、adroit(器用な)という英単語が生まれる。同様に、フランス語のgauche(左;不器用な)は、ほぼ「不器用な」の意味の英単語として使われている。

 

 

英語のrightには「右」と「正しい」という意味があることは即座に思い浮かぶ。2013年3月に永眠された印欧比較言語学の泰斗Calvert Watkinsの辞書The American Heritage Dictionary of Indo-European Rootsによると、rightは印欧祖語のreg-(まっすぐ動く;導く;支配する)に源があるらしい。すると、ラテン語のrego(支配する)やrex(王)とも親戚関係ということになるであろう。このreg-の概念は英単語のregular(通常の)やrule(支配する)などに受け継がれている。

 

 

蛇足として、世界には、マヤ族のツェルタル語のように「右」や「左」という語彙そのものが存在しない言語体系があるそうである。右も左もないということは、空間の認識上の切り取り方が私たちのそれとは異なることを意味している。空間の把握方法が、人類共通のものではなかったというのは衝撃である。詳細は以下参照。『もし「右」や「左」がなかったら/言語人類学への招待』(井上京子 大修館書店)

 


< 英単語の作り方 > 2(形容詞を作る)

2013.08.19

 [接尾辞 –y]

cloud(雲)/ cloudy(曇った)、sun(太陽)/ sunny(よく晴れた)というように、名詞に接尾辞の –yを付け加えると形容詞を作ることができる。天気の表現以外にも、造語力旺盛な –yはその活躍の場を日々広げている。

oil(油)/ oily(油っぽい)のように、物・物質に付け、「~に満ちた;~から成る」の意味の形容詞を作る場合や、sleep(眠る)/ sleepy(眠い)のように動詞に付加し、「~する傾向がある;~の性質の」の意味の形容詞を作ることもある。また、yellow(黄色い)/ yellowy(黄色っぽい)のように形容詞に接続し、その意味を変化させることもある。

 

 

以下の形容詞の意味を考えてみよう。

 

天気などの表現の例。

1)    rainy

2)    stormy

3)    windy

4)    misty

5)    snowy

6)    starry

1)雨の 2)嵐の 3)風の強い 4)霧のかかった 5)雪の降る 6)星の多い

 

 

「物・物質」に付け、「~がたくさんの;~の特徴をもつ」の意味の形容詞を作る。

1)    oily

2)    dirty

3)    bloody

4)    salty

5)    creamy

6)    fatty

7)    thorny

1)油っぽい 2)汚い 3)残虐な(血みどろの) 4)塩辛い 5)クリーム状の 6)脂肪の多い 7)やっかいな(とげのある)

 

 

「抽象名詞」に付加し、その名詞の性質を表す形容詞を作る。

1)    greedy

2)    faulty

3)    panicky

4)    itchy

5)    wordy

6)    dreamy

1)貪欲な 2)欠陥のある 3)パニック状態の 4)かゆい 5)口数の多い

6)夢をみているような

 

 

「色」に付け、「~っぽい」の意味を表す。それぞれ、yellowish, greenish, whitishとも言える。

1)    yellowy

2)    greeny

3)    whity

1)黄ばんだ 2)緑がかった 3)白っぽい

 

 

「生き物」に付け、抽象の度合いを進めている例。

1)    fishy

2)    foxy

3)    catty

1)疑わしい 2)魅惑的な 3)ずるく悪意のある

 

 

「動詞」に付加する場合、「~する傾向のある」の意味の形容詞を作る。

1)    tasty

2)    sleepy

3)    sticky

4)    chatty

5)    pushy

1)味の良い 2)眠い 3)べとべとの 4)おしゃべりの 5)でしゃばりの

 

 

綴り字の変化を起こす例。

A:最後の eを落として –yを付ける場合。

ease / easy,  smoke / smoky,  scare / scary,  nose / nosy(詮索好きな)

B:最後の子音字を重ねる場合。

sun / sunny,  fog / foggy,  cat / catty

C:最後の子音の前のeが落ちることがある。

anger / angry,  hunger / hungry


< 英単語の作り方 >1(形容詞を作る)

2013.08.09

[接尾辞 -ful / -less]

careful(注意深い)とcareless(不注意な)、それにharmful(有害な)とharmless(無害な)などの対概念の単語を並べてみると、語尾の -fulと -lessが反対概念を担っていることは直感的にも見て取れる。このように基本となる語の後ろに取り付ける接辞は、接尾辞と言われている。単語を作り出す際に、接尾辞は極めて有益な働きをしている。今回は -ful(~でいっぱいの)と -less(~がない)という生産性の高い2つの接尾辞について見ていこう。以下の例のように形容詞を作る働きがある。尚、すべてペアで存在するわけではなく、-lessの方が頻度が高い。

This picture is full of color.  It is a colorful picture.

This picture has no color.  It is a colorless picture.

 

 

1)   meaningful     意味深い

2)   meaningless     意味がない

3)   thoughtful         思いやりのある

4)   thoughtless      思いやりのない

5)   useful               役に立つ

6)   useless            役に立たない

7)   fruitful               実りある

8)   fruitless            実りのない

9)   merciful            慈悲深い

10) merciless         無慈悲な

 

 

-lessにおいて、次の単語では意味の上での注意が必要。pricelessでは、「価値がない」ではなく、「価値がつけられないほど高価な」の意味になる。

11)  priceless          値段がつけられないほど高価な

12)  countless         数えられないほど多くの

13)  numberless      無数の

14)  tireless             疲れを知らない

15)  timeless           時間が計れないほど長い間の

 

 

次の単語の意味を考えてみよう。ruth(哀れみ)やreck(用心する)のように根幹となる基本語が、現代語ではほとんど使われなくなった例もある。

1)    painful

2)    ruthless

3)    reckless

4)    moonless

5)    awful

6)    sleepless

7)    helpless

8)    youthful

9)    cheerful

10)  ageless

解答

1) 痛みをともなう 2) 容赦ない 3) 向こう見ずな 4) 月のない 5) とても悪い 6) 眠れない

7) 自分では何もできない 8) 若々しい 9) 元気のいい 10) 不朽の

 

-fulにおいて、基本語が動詞の場合には、forgetful(忘れやすい)のように動詞の性質を表した形容詞を作る。

1)  neglectful       怠慢な

2)  wasteful         むだの多い

3)  resentful        怒りっぽい

4)  mournful        死者を悼むような

 

 

-fulにおいて、「~一杯(の量)」という名詞を作る場合がある。その時には、「入れ物」的なものが基本語になる。

1)  spoonful     スプーン1杯

2)  cupful          カップ一杯

3)  handful       一握り

4)  basketful    かご一杯


セム語と印欧語の語根

2013.07.31

アラビア語やヘブライ語やアッカド語などのセム語の学習に取り掛かると誰でも、事象を切り取るその文法の切り口が印欧語(ラテン語、ギリシャ語、サンスクリット語、ドイツ語、英語、フランス語など)とはかなり異なることに驚くものである。その一つに、子音(主に3子音)で構成される語根という概念がある。たとえば、アラビア語では「書く」という意味の語根は*ktbである、という言い方をする。この3つの子音に母音を挟むことや接辞などを付加することで単語を作り出していく。

 

 

ここでは、語根*ktbを大文字で表記して単語の構成を視覚的に確かめていこう。KaTaBaとすると「彼は書いた」となり、KaaTiBは「作家」、KiTaaBは「本」、maKTaBは「図書館」という具合である。意味の中心を構成する子音は硬質な石のイメージで、母音はその3つの石をつなぐ柔らかな粘土のような接着材的役割を果たしているように見える。セム語においては、このように語根を中心に語が形成されるシステムに特徴がある。

 

 

このシステムをゲルマン系英単語に応用してみると、BeaR, BoRe, BoRn, BuRden, BiRth からBとRを抽出し、「生む;耐える」の語根は*brと言えなくはない。SiNG, SaNG, SuNG, SoNGの語根は*sng(ngは1つの語根と考えるべきであろう)であり、GiVe, GaVe, GiVen, GiFtの語根は*gv(fはvの無声音なので、この2つは同じものと考えることができる)である。ゲルマン系英単語の語根は2つの子音であった!

 

 

しかしながら結局のところ、これは印欧語の文法家の言う母音交代、つまりAplaut(アプラウト)であって、セム語の語根活用システムとは異なるように見える。アプラウトについては、また別の機会に考察していこう。何れにせよ、印欧語もセム語も、それぞれの単語の意味の中核は子音が担っており、母音は補佐役と言えよう。


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